29:態度 ページ30
またもや返事を待たずに部屋に押し入ってきたソイツは、テーブルに皿を広げた。
3つのお握りと、浅漬けのキュウリ。
「……朝食です。どうぞ」
垂れた前髪の隙間から、ふと琥珀色の瞳が覗く。
その視線に寒気を感じながら、おにぎりに手を伸ばした。
「!……漬けマグロか、」
「えぇ、醤油にみりん、山葵を混ぜて一晩漬け込みました」
黙々とおにぎりを食べる間、Aはそわそわと落ち着きがなく、時折俺の顔色を伺うかのような視線を寄越してくる。
「……何だ」
「っいや、何も」
ふいと視線を反らしたAは腕を組んだまま本棚に寄りかかり、そしてまたチラリと俺を見た。
居心地は限り無く悪いが、おにぎりはただただ旨い。
早々に皿を綺麗にすれば、少し満足気なAが、持っていたトレーに皿を引き上げた
「おい」
「っはい、」
「……言いてぇことがあるなら言え」
ビシリと固まったAは、次の瞬間大きく口を開けて、そして閉じ、ギリィッと歯を鳴らした。
……何なんだ一体。
かと思えば悔しそうな表情を浮かべて一言。
「……クッソ、絶対に負けねぇ…!」
「何なんだテメェは」
そう呟いた頃には、すでに部屋の扉は閉まっていた。
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作者名:かなで x他1人 | 作成日時:2019年10月3日 21時