21:アホ ページ22
俺が視線を上げれば、ソイツはビクリと肩を震わせたが、小さく息を吐き出すと、ペンギンの影から一歩踏み出し、勢いよく頭を下げた
「っあの、ご挨拶もせずに食堂を勝手に使って申し訳ありませんでした！！」
ふわり、と、遅れた髪が揺れて、ぱさ、と乾いた音をたてた。
静まり返った部屋に、俺が本を閉じた音がやけに大きく聞こえた。
「おいお前」
「っはい！」
びしっと顔をあげた女は、妙に印象的な琥珀色の瞳で俺を見詰めた。
それが妙に居心地悪く、視線を外したまま口を開く。
「……此処が"何"か分かってんのか？」
その質問に、女は不思議そうな表情で首をかしげ、その後ろではペンギンがひくりと口元をひきつらせた。
「えぇっと……皆さんで海を旅してるって、」
アホみたいな解答に露骨にため息を吐き出すと、女はさらに首をかしげる
「此処は海賊船だ」
「っぅ、ええええええ！？」
女の絶叫に顔をしかめつつも、部屋を出ようとして居たペンギンを呼び止める
「テメェ、説明もせずに連れてきたのか」
「うっ、」
だってぇ…と口を濁すペンギンに盛大にため息を吐いて、再び女に視線を戻す。
信じられない。とでも言いたげに俺を見詰めているソイツを追い払うように手をひらりと上げた
「そう言うわけだ。此処はテメェの様な一般人の居て良い所じゃねぇ、さっさと失せろ」
「ちょ、キャプテン、そんな言い方……」
「いや、わかりました。
でも、出ていく前に１品だけ、私の料理を食べてもらえませんか」
慌てるペンギンとは対照的に、女は俺に歩み寄り、座ったままの俺の顔を覗き込んだ
「あﾞ？」
「さっき、唐揚げしか食べてませんでしたよね。それに顔色も悪いし隈も酷い……きっと鉄分不足です、鉄分を補うなら食事が一番効果的ですから！」
呆れてモノも言えないとは正にこの事か。
じっとガンを飛ばすように見詰めてくる女に、俺は三度溜め息を吐き、「好きにしろ」と言って、医学書を開いた
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作者名：かなで x他1人 | 作成日時：2019年10月3日 21時
