妖と祓い師 (ページ5)

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『フゥーーー……＿』

紬につけてもらった煙管を吹かしながら、月夜を見上げる。
父上には、また悪いことをしただろうか。

本家付きの払い師も召使いも、若姫の私をよく思っていない者ばかり。

父上は板挟みもいいところだろう。優しすぎるのが玉に瑕な、とても出来た人間だから。

母上もそれはいい人間だったと聞いている。結局生まれたのは私のような出来損ないだけども。

どうも一人になると、余計なことを考えてしまう。

悪い癖だ。

？「どうも〜」

『！』

庭の隅から近づいてくる下駄の音。雲の切れ目からこもれた月明かりが照らす大男。

すぐさま煙管を放り出し、刀を構えた。

『狐……！』

狐「お粗末な結界術やから、すぐ解けてもうたわぁ」

にぃ、と人の悪そうな笑みを浮かべている。月明かりの演出か、一切の妖気を放っていないからか、昨日より何倍も恐ろしく私の目には映る。

『何しに来た』

狐「昨日も思ったんやけど、アンタ可愛くないってよく言われません？」

『答えろ』

狐「……顔を見に来ただけですけど」

『わざわざ祓い師の屋敷にか』

狐「まぁ、そうなりますよね」

『……もっとマシな言い訳はないのか』

狐「言い訳に聞こえましたぁ？」

ホント、何しにきたんだ、こいつ。