妖と祓い師 (ページ3)

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狐「折角助けてやろうと思ったんに、切るとか酷ない？」

『妖の情けなど無用だ』

狐「あんた、ようこんな状況でそんなこと言えたな」

狐の尾で作られた空間に囚われてしまった。妖気が強すぎて札も呪詛も効かない。というか、両腕とも手首に毛が絡みついて身動きが取れない。

狐「5年に一回くらいの頻度で来るやつでしょ？西華院の」

『だとしたら？』

狐「舐められたもんですねぇ。私、一応大妖怪の部類に入るんですけど」

『それくらい知っている』

狐「……」

キッと睨め付ければ狐は目を細める。なぜこいつは私を殺さない。こいつにかかれば私なんて赤子同然だろうに。

両腕に絡む狐の毛が手甲を裂き、肌に食い込む。生暖かい何かが流れ、激痛を伴ったために握っていた刀を落としてしまった。狐はそれを面白そうに掲げてみている。

そこですぅっと目が細めた。

狐「ちょっと失礼……」

狐は私の左腕を掴むと、流れる血をきれいに舐め取っていく。

妖力によってか血は止まった、が気色悪い。

何か考えながら、狐は私の鞘に刀を戻した。

一瞬身構えたが、これ以上危害を加えてくるつもりはないらしい。

思考が完結したらしい。狐は薄ら笑みを浮かべると、さらに妖気を濃く強くした。

一瞬気を持って行かれたが、耐えられないほどではない。必死だが。

狐「流石、大した娘やな」

さらに強く……あぁ、もう無理だ。

－－－

気がつくと、森に寝そべっていた。境界から放り出されたらしい。よく生きてたな、私。この任務、人がバタバタ死ぬって聞いてたんだが。

少し離れたところには継ぎ目もなく元通りの手甲と、壺が落ちていた。それも妖気入り。内容量は目標値の2倍。

私が回収した覚えはない。狐が自ら流し込んだそれ。

取ろうと左手を伸ばす。そこで気づいた。

『なんだ、これ……』

締め付けられていたところだろうか、手首を一周するように痣ができていた。青みがかった痣。

しかし、同じように締め上げられた右腕はなんともなっていなかった。

……なにこれ。