妖と祓い師 (ページ11)

今日:14 hit、昨日:0 hit、合計:864 hit

11 ページ11

厳かに、ただ食事前の礼だけをして始まる。箸と食器のこすれる音だけが、この空間を支配している。

10分ほど立った頃、上座から割と近い方、恐らく私より4つほど上と見える男が、血を吹いて倒れた。一応軽症ではあるが、ほたっておくと命を落とす。すぐさま運ばれていった。

また一人、また一人と……今日は3人。うち1人は死亡した、と食事の終わりに伝えられた。

午後2時。お開きとなったため、いの一番に門を目指す。

？「もう少し、ゆっくりしていけばいいんじゃない？鈴」

『お久しぶりです』

門扉によりかかり、こちらを微笑んで見つめる男。本家住みの祓い師の永遠。許婚のいけ好かない野郎だ。

？「君と僕が会えるのはこういう日ぐらいなのに、どうして僕を避けるのかな」

『別に、避けてなどおりませぬが』

遠「嘘。別にいいじゃないか。恋人同士だろう？」

『上が決めた婚約です。時が来るまで、貴方は長ではないし、私も辺境に派遣されたただの祓い師です』

遠「それはそうだけど……いいじゃないか」

『任務がありますので』

遠「君が子を成す以上に、どんな任務があるというのだい？」

この会話でお分かりにだるだろうが、私はこの男が死ぬほど嫌いである。それはもう、あの狐と結婚するほうがマシだ、と言い切れるほど。

上、というのはこいつの一家。私を閉じ込める、とか言ってたのもそう。

死ぬ危険性がある食事にも参加していない。ただ本家に住まう次期頭主。

遠「さ、中に入ろう。僕の部屋においで」

『結構です』

ぼうっとしていた私の袖を掴み、引く永遠の腕を軽く振り払う。

そのまま、門番に預けていた箒を受け取って空に飛び立つ。

日中なので姿隠しの術を全身にかけた。

西華院で浮遊系の術が扱えるのは私のみ。式神という手もあるが、腹黒い永遠に付き従う鳥はいないため、あいつは追いかけてこない。鳥は賢いからな。

さて、今日は丑三つ時辺りに狐の屋敷に行こう。