【ky】最終兵器と白銀少女【実/況/者】 (ページ3)

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1話　誘拐ページ3

『ここは...』

突然の状況に、気持ちの整理がつかない。

私はたしか、キヨと出かけて映画を観て、2人で街を歩いていて...

...そうだ、ようやく思い出した。

後ろから腕を引っ張られて、キヨとはぐれたんだった。

その後のことは全く記憶にないけど、きっとこれは誘拐というものなのだろう。

だとすると、私はなにかで眠らされたりでもしたのかな…

…キヨが嫌いそうな埃っぽい部屋。

せっかくフジがくれたキレイな服も、少し汚れてしまった。

すっきりとしない気分のまま、とりあえず部屋を見渡す。

コンクリートの床と壁に、覗き窓付きの扉が1つだけある。

それと、かなり高い所に窓と通気孔があるけど、私の身長では届かなさそうだ。
　

重そうな扉の向こう側から声が聞こえる。

男の人の声...さっきからずっとなにか会話をしているみたいだ。

不幸中の幸いというものなのか、腕や足が縛られたりしていることはなかったから、私は立ち上がって扉の前まで歩いた。

試しに、覗き窓から向こう側を少し覗いてみよう…

ちょっと背伸びをすると、向こう側の景色を少しだけ見ることができた。

『...?』

何故だろう...どこか見覚えのある気がする2人が、ソファーと椅子に腰掛けて話しているのが見える。

耳を当てたら、もう少し聞き取れるかな...

そう思って、私は冷たい扉に耳を当てた。

「...から..で...のち...」

「..をつか...お...」

『ん...よ、よくわからない...』

どうしよう...このままここにいれば、いずれあの2人が来てしまう。

…怖い

あのとき...あの、真っ白で薬の匂いが染み付いた部屋と同じ雰囲気が漂っていて、気分が滅入る。

『とにかく、早くここから...』

悠長にそんなことを考えていると、足音がだんだんと近づいてきて、重そうな扉が音をたてて開いた。