【竜胆さん2】 ページ10
「何だよそれ……」
「解熱剤です。これ飲んでも熱下がんないなら救急車呼びますから」
「変なヤロー」
「なんとでもどうぞ。早く元気になってください」
救急車、の単語が相当嫌だったのか素直に薬を飲んでくれた。ついでに、頭の傷のガーゼも替える。包帯を巻く前に手を当てた額は、しっかりと熱を持っていた。
「やっぱり熱い」
「……もうちょい、こんまま」
冷たいのが気持ちいいのかお兄さんの大きな手が私の手をしっかりと額に固定する。
「冷えピタ、貼っときましょう」
「ガチガチすぎねえ?」
「解熱剤が切れたときの保険です。お兄さんは……」
「竜胆」
「え?」
「名前、俺の。お兄さんって、むずむずすっから」
冷えピタを貼って、包帯を巻く。
完璧だ──!
絶対に熱を下げる強い意志を込めた三段構え。
「そう言えば、竜胆さんはお兄さんがいるんですか?」
「あ?んでお前がそんなこと知ってんだよ」
しまった……。
竜胆さんの声が低くなった。表情から敵意をバチバチに感じる。深入りはダメだ。
警戒するような視線が刺さる。向けられる敵意に内心びくびくしながらも、努めて目を逸らさないようにする。森で熊に会った時の対処法と同じだ。
「さっき魘されながら兄ちゃんって言ってたので……」
「〜っ、くそ!」
やっちまった、というように頭を抱えていらっしゃる。
「勝手に人の寝言聞くなよ!あー、いいわ。もう寝る!」
ここは私の家で、そこは私のベッドだ。
ガバッと布団を被った竜胆さんは私に背を向けてしまった。
グググ、と拳を握った午後8時。
熱のある竜胆さんの前でテレビをつけたりなんてできない。私は極力静かに行動しながら、眠気が来るのを待った。
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作者名:はいず | 作成日時:2022年7月31日 22時