【どういう状況】 ページ27
「どういう状況?」
こっちが聞きたいです。首だけで振り返って見た部屋の入り口には、ポカンとした顔のお兄さんが立っている。
「た、助けて……」
朝起きたら目の前に整った顔があって、声にならない悲鳴が出た。おまけに抱き込まれて、竜胆さんの手足に体をロックされているため抜け出せない。昨日寝る時は人一人分くらい離れて寝ていたのに。
竜胆さんの肩越しに見えるデジタル時計が正午を告げようと、竜胆さんが起きる気配はまったくない。昨日疲れたと言っていたから無理矢理起こすのも気が引けて、時間はどんどん過ぎてしまっていた。
「お兄さん、助けてください」
「あー」と何かを考える風に視線を外して、こちらに向き直ったお兄さん。
「めんどくせーからそのまま固められとけ」
「は!?」
そのままドアを閉めて出て行ってしまった。すぐにリビングから聞こえ始める、お昼のバラエティ番組の音。
「東京のパワースポットを巡る、ということで〜」とテンションの高いタレントだか芸人だかの声が聞こえている。私もそれが見たい!
頭上からは、相変わらずすうすうと穏やかな寝息が聞こえていた。こうなったら自力でなんとかするしかない。
布団に入って、もうすぐ半日。同じ体勢なのもきついし、いい加減に布団の外に出たい。テレビも見たい。
それに、お兄さんも何か用事があって竜胆さんの家に来たんだと思う。寝かせておいてあげたい気持ちはあるけれど、起こすしかない。
「竜胆さん、起きてください」
意を決して軽く竜胆さんの胸を叩くと、きゅっと眉根が寄せられた。
「…ん……朝?」
「昼ナンデス」
「そ……」と短い返事の後に、ギュッと絡まる四肢の力が強まった。最悪──。
「起きてください!」
「こんまま……お前と、寝る……」
「もう充分寝てるんです!」と竜胆さんの胸を押しても、もそもそと動いてみてもびくともしない。こうなったら昨日と同じ。肉を切らせて、なんとやらだ。
「今晩また一緒に寝ればいいじゃないですか」
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作者名:はいず | 作成日時:2022年7月31日 22時