コウモリ傘【灰谷竜胆】 (ページ24)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:27,325 hit

【攻防戦】ページ24

(A視点)

「竜胆さん、こ、これは……な゛んでしょう？」

状況に思わず声が震えた。固まった表情筋。その中で、頬の筋肉は一段と引きつって少し痛い……。
私は今、ソファの上で、帰宅した竜胆さんの足の間に捕まり、しっかりと後ろから抱え込まれていた。腰をホールドする手がお腹に食い込んで、グリグリと額が肩に押しつけられている。

ここに来て2週間。最近は、竜胆さんとの距離の取り方がだんだんわからなくなってきていた。

一週間経つまでは、寝る前にソファに座って他愛もない話をして。一緒に寝よう答えはNOと攻防するだけだった。最近は、帰れば「退屈じゃねぇ？」とか「俺が帰るまで何してた？」とか──。

昨日なんて、二人でテレビを見ながら「ここ、一緒に行きてぇな」と画面に映る高級リゾートホテルを指していい笑顔で言っていた。

距離の詰め方が尋常じゃない。そして、今日。極めつけがこれだ。

ぐりぐりの度に、竜胆さんの髪が首筋に当たってくすぐったい。

「竜胆さん、何があったんですか」

「疲れた……」

「お、お疲れ様です」

「一緒に寝よ」

「寝ません」

攻防戦の防御の難易度が上がってる……。
昨日までは、こんなことはなかった。ちゃんと隣に座っていたのに。何が引き金になったのか、今はゼロ距離ホールド──。

これじゃあ寝ように寝られない。
私は、頭の中で必死に竜胆さんにどいてもらう手を考えた。お疲れのところだろうけれど、生活のリズムを崩したくない私はそろそろ寝たい。

「本当にそろそろ……」

「……いや」

「！」

「こんまま寝ればいいだろ」

こんなの暴論もいいところ。どうやら今日の竜胆さんは、絶対に一緒に寝る魂胆のようだ。どうにかして離してもらわないと寝られない。

何か考えないと──！