【これは……】 ページ14
(A視点)
「──!」
気がついたら、どこかの部屋に手足を拘束されて寝かされていた。ローテーブルには、ビールの空き缶や高そうなお酒の瓶、アイスペール、ウイスキーグラス。どう見ても飲み会現場だ。
「これは……」
一人でロードショーを見ながら飲む予定だった私への嫌がらせなのか。もそもそ、と動いて体を起こす。手を前側に縛ってくれたのは、不幸中の幸い。
「起きた?」
「!」
ガチャリ──。扉が開いて入ってきたのは、気を失う前に道で会ったお兄さん。ゆるいスタイルの部屋着に着替えていても、喉元の入れ墨はカチッとしてそこにある。
「竜胆助けたの、お前?」
「え……?」
「ありがとな」
屈んで、よしよしと頭を撫でる大きな手。
普通の──生活感がある部屋というシチュエーションも相まって、妙に安心してしまった。
「竜胆さん、元気ですか?」
「ん。助かったっつってた。けど、かわいそ」
ニコッと笑って、突き付けられたのは、重くて冷たい鉄の塊。他人事のような台詞。
「関わんなけりゃもうちょっと長生きできたのになぁ」
銃だ──。スパイ映画や刑事ものなんかでしか見たことがない。指一つで、命を取り上げる事ができる黒い鉄の塊が額に押し付けられていた。
「大人しく、お散歩行くか」
ここでは、殺さないということなんだろうか。怖い──。声を、出すことができない。
目の前の彼と一緒に外に出たら、お散歩コースの終着点は山か海だ。
「まだ……」
死にたくない。そう言おうと口を開いたら後ろからすごい力で引っ張られて、ガシッと首と頭をホールドされる。ヘッドロック──。
お酒の匂い、すごい……。
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作者名:はいず | 作成日時:2022年7月31日 22時