【おかえり】 ページ13
(蘭視点)
二日、戻らなかった竜胆が帰ってきた。汚れたスーツで、玄関からリビングに入ってくる。
「悪ィ、兄貴。ちょっとヘマやった」
「連絡もしねぇでどこ行ってた?」
内心、安堵しながらもそれを表情に出すことはしない。
「スマホ壊されて連絡すんの無理だった。追われて……そっからしばらく戻れなかった」
視線を逸しながら、「ごめん」と続ける。
「片付けたのかよ」
「聞き出す時間もなかったから、どこの組織かもわかんねぇ」
ポツリ……ポツリ……。
竜胆が経緯を話す。当然、これは梵天で共有されて、楯突いた組織は例外なく潰される運命を辿る。
俺たち梵天の行動は速かった。部下が裏切ったと話した竜胆。他に紛れ込んでいないか探って当たりが出れば漏れなく処分する。裏切り者から吐かせた情報から楯突いた組織も割れて、ものの一週間で解体した。
けど──。
やっと始末がついたと思ったら、竜胆が変だ。時間が空いたら、真新しいスマホを見ながらゆるっゆるの頬を必死に抑えようとしてるし、スマホの買い替えの時だって真っ先に最新機種を選ぶところを同年に出た少し前の型を選ぶ。
「また壊されたら連絡が取れねぇだろ」と最新機種も一緒に契約していた。そわそわしてる竜胆の様子は、他のメンバーも気づいているらしい。
「お前の弟、最近なんかあったのか?」
竜胆が空けている時に、三途が面倒くさそうに投げかける。
「知らねぇ」
「テメェの弟がどうなろうと知ったこっちゃねえけど、俺らの情報が漏れるような事があんなら漏れなくスクラップだぜ」
ニィ、と三途の口角が上がった。
竜胆もそこはよくわかってるだろうから、問題はねぇと思う。まあ、念には念を……か。
「りんどー」
「何?」
「お前、最近なんかあった?」
竜胆の家──。
ソファの上でスマホの画面を眺めている竜胆へ声をかけた。
「は!?何もねぇけど……いきなり何だよ」
驚いたように体を起こして、カウンターチェアの上で足を組んだ俺へ視線を向けた。
ぴくり、と跳ねる肩。急にスリープにしたスマホの画面。上がる顔。その所作全部が物語る。
はい、ダウト♡
「なあ、竜胆……今日、久しぶりに家飲みしねえ?」
兄ちゃんに隠し事するなんてつれねぇじゃん。
ちゃーんと付き合ってやっから、腹割って話そうなぁ──。
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作者名:はいず | 作成日時:2022年7月31日 22時