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【予定変更】 ページ22

「なんでAのことあいつに言ったんだよ」


エンジンの音と外の風を切る音だけが響く車内で、徐に竜胆が口を開いた。


「お前、Aちゃんのこと離す気ないんだろ」


「……ない」


「だからだよ。馬鹿じゃねえみてぇだし、生きたがりだから外に出してやったところで喋らねぇとは思うけど、外に出した後のお前の方が問題なの、自覚してっか?」


Aは馬鹿じゃない。俺らがそっちの人間だと気づいていても、深入りしねぇでちゃんと戻り道を確保しようとしている。


問題は竜胆だ。
昨日だってそう。夜中に連絡してきたと思ったら、『Aが全然一緒に寝てくれねぇ』とクソほどどうでもいい内容だった。当然、無視した。


「兄ちゃん相談してもシカトするし」


「昨日のアレは連絡と報告だろ」


隣から舌打ちが漏れる。これはうまく事が進まないことに対して。


「重症だな」


「あ?」


今でさえ、付き合ってもねぇのにお預けくらったとイラついてるくらいだ。
いなくなろうモンなら、竜胆は必死こいてAを探すだろう。その上、めんどくせぇくらいに荒れる。そももうすでにめどくせぇ──。


第一、いきなり距離の近けぇよく知らない男に、毎晩一緒に寝ようと言われてる当人からすりゃお預けもクソもねえ。


「Aちゃんみてぇのはちゃんと段取り踏まねえと無理」


「もう一緒に住んでんじゃん」


「お前らまだ付き合ってすらねぇんだわ。そのへん分かれ?Aちゃんにその気がねぇの」


「じゃあ……どうしろってーの」


呟くように言った竜胆。車はトンネルに入る。風の音が消えて、目を刺激する流れる橙色が鬱陶しくて横目に竜胆を見た。口を結んだままぶすっとした顔でハンドルを握っている。

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作者名:はいず | 作成日時:2022年7月31日 22時

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