夏アイス【灰谷竜胆】 (ページ2)

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小学生、最後の夏休み。

お手伝いを頑張ったご褒美にもらったお小遣いを握りしめて近所の駄菓子屋に駆け込んだ。

62円の当たり付きアイスを買って、食べながら夕暮れ時の道を歩く。

「待てよ！」

「そんなカッカすんなぁ」

「俺のアイス食っただろ！」

「もう一個貰えばいーだろー」

「ハズレてんだよ！」

傍でそんな声が聞こえてすぐ、脇道から金髪が飛び出してきた。

立ち止まって反射的に目で追ってしまい…

「え？」

「！」

「あ…」

べちょ…

次に飛び出して来た金髪に気づいた時には、全力で走っていた相手も急に止まれず

見事、衝突して倒れ込んだ。

「いったぁ！」

「いってェ！」

目の前にはお互いの顔。二人して見つめ合った状態。

「大丈夫かー、お前らァ？」

べったりとくっついている状態の自分達の状況を理解して、サッとお互いに離れ、立ち上がる。

「わりぃ…」

「いや、大丈夫…じゃない」

「あ！」

倒れ込んだ時に持っていたアイスは、私と金髪の間に挟まれ、服にべったりと付いて無惨な姿になっていた。

金髪の服にくっついていた芯の棒がカランと乾いた音を立てて落ちる。

「当たりだ」

「だな」

お互いに顔を見合せて少し…

アイスで喧嘩してたみたいだしいいか。

「それ、あげる！」

なんだか気まずくて、私は走ってその場を後にした。

「よかったじゃん、アイス食えんぞ」

「あ゛？兄ちゃんがわりぃんだろ！」