逃げても逃げても何度でも

【First facts】 ページ10

直人くんが迎えに来て、車でマンションまで移動する。


直人くんの部屋にお邪魔しても花垣くんの姿はなかった。


「花垣くんは？」



「姉さんのところです」



「それじゃあ！」


「えぇ。今回は、姉さんがいる未来です！」



「よかった！」



日向ちゃんが生きてる！



ホッとして力が抜け、その場にへたり込むように力が抜けてしまった。




「それで？あの後、貴女は翌日出勤せず、このマンションの入口前に壊れたスマホを残して消えた。目撃者もおらず、失踪事件として捜査本部が立ちました。一体、何があったんですか？」




「長くなるけど、訳を話す前に名前を変えた理由から話すね」




私は、名前を変える事になった二人についての話を始めた。


話している間、直人くんは、ただただ真剣に私の話に耳を傾けてくれている。



「そして、あの夜以降、私はずっと二人のところにいた」



「…なるほど。つまり、未だに貴女を探しているということですね」



「そうみたい。だけど、見た目だって昔に比べれば随分変えたつもりだったのに…」



どうして気づかれてしまったのだろう…

　

「…ところで、今回の未来での貴女の名前と経歴は？」




「え？本宮A、変わらず警視庁勤務だけど。どうしたの？」


直人くんは、顎に手を置き、何かを考える仕草をする。



何を言われるかすごく怖いんだけど…



じーっと見つめられてるしどうせなら一想いに言ってほしい。



「残念ですが…現時点で改名した過去と経歴が変わっていないということは、十中八九、貴女はまだ彼らから逃げているということです」


複雑な表情で一言。
出てきた言葉は、背筋を凍らせるには十分すぎた。


「直人くん、夏だからって怖い話は…」


「大真面目ですよ！今回も、もし見つかれば前回と同じ轍を踏む可能性が大いにあります。極力、一人になるのは避けてください」


「わ、わかった！」


「次の出勤時に二人について警察で保管しているデータについて調べてください。僕の方でも当たってみます。まるで見えない敵ですが算段を立てましょう」


「っ…ありがとう！」


「明日の出勤は、念の為、僕が迎えに行きます。」


実家に戻る直人くんに、ついでで車で送ってもらう。


(現時点で改名した過去と経歴が変わっていないということは、十中八九、貴女はまだ彼らから逃げているということです。)


さっきの直人くんの言葉の重みが、枷のようにのしかかった。

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