【appear】 ページ23
「っ、Aちゃん!」
「え?」
衣擦れの音がして、直後、背に重みを感じる。
「A♡」
「…ら、ん…くん?」
何でここにいるの?
「A見つかったか…って、何やってんだよ兄ちゃん」
「Aの補充♡」
ぎゅーっと力を込められる。
目の前の彼女の顔が真っ青になっている。
「ねぇ、蘭くん。私が小学生の時に相談してた「あーもしかしてバレた?」
「ど、どうして?」
「んー、Aの周りに他のやつがいんのムカつくから♡」
蘭くんの表情は見えないけど、声音はすごく楽しそう。
あんなに会いたかったはずの二人に会えたのに、今、胸の中にあるのは嬉しさではない。
この胸のモヤモヤを言葉で表すなら嫌悪感…だと思う。
「蘭くん、離して」
「嫌」
短く返されてさらに力を込められる。
「あーあ、Aから目ぇ離したのやっぱ失敗だったわ」
「ひッ!ご、ごめんな…さい」
「兄貴、騒ぎになるから抑えろよ」
目の前の友達から短い悲鳴と震える謝罪が漏れてきた。きっと蘭くんが睨んでいるのだろう。
思えばあの日、公園で急に帰った男の子もそうだったのかもしれない…
彼女は、少し後ずさりしたと思ったらそのまま全力で走って出て行ってしまった。
空き教室には、私達だけになる。
正直、置いて行かないでほしい。
「A、帰ろ♡」
「蘭くん、私、まだ学校があるよ」
だから、まだ帰らないと告げれば、タイミングよく太陽が雲に隠れたのか陰りができて、窓ガラスににっこりと満面の笑みの蘭くんが映った。
すごく怖い…
二人には、まだ聞きたいことが山ほどある。
今すぐ学校を出て問い詰めたいくらい。
けれど、きっとこの二人は、何を聞いても教えてくれないだろう。
なにより今は、二人と一緒にいたくなかった。
「んー、蘭ちゃんの言い方が悪かった?…ダチ泣かされたくなかったら俺らと来いつってんだよ」
耳元で凄まれてゾクリと体が震える。
勝手に思っていたと言われれば、それまでだけど、優しいお兄ちゃんという印象は、硝子が割れるみたいに粉々に砕けた。
「A、行くぞ」
竜胆くんに手を引かれながら廊下を歩く。
こうなったらいくら言ったって聞いてくれないのは、初対面の時から変わらないからもう諦めるしかない。
蘭くんも私の後ろを離れずついて来る。
心配しないでも、あんなこと言われて逃げたりしないのに…
私達は、廊下や教室の中の生徒の好奇の視線を浴びながら学校を出た。
669人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はいず(プロフ) - ATR214YSさん» ありがとうございます(*^^*)なかなか時間が作れず待たせしてしまい申し訳ありません!更新頑張りますので、またお時間のあるとは是非お付き合いいただけると嬉しいです! (2021年12月17日 20時) (レス) id: 99916fa5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はいず(プロフ) - ttakedasaki0906さん» コメントありがとうございます!ゆるゆる更新でお待たせしてしまい申し訳ありません!これからも引き続き、更新頑張りますので、お時間のある時にお付き合いいただけると嬉しいです(*^^*) (2021年12月17日 20時) (レス) id: 99916fa5c7 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 待ってましたっ更新お疲れ様です! (2021年12月9日 18時) (レス) @page47 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - 楽しみに続き待ってます! (2021年12月7日 8時) (レス) id: 732dff87b6 (このIDを非表示/違反報告)
はいず(プロフ) - Marie Lunaさん» 温かいコメントありがとうございます!励みになります!時間の許す時に更新できればと思いますので、お暇な時にでもお付き合いいただけると嬉しいです(*^^*) (2021年11月19日 6時) (レス) id: 99916fa5c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:はいず | 作成日時:2021年10月16日 13時