逃げても逃げても何度でも

【Clue】 ページ15

(直人side)


気がつくとひどい頭痛がして、手で頭に触れれば、手には自分の血液。



そうだ。Aさんの家に来て、車を降りたら…


「Aさん！」


頭痛なんてお構いなしに車を飛び出しAさんの部屋へ向かえば、部屋の中は暗く、人の気配はない。


口をついて出たのは謝罪だった。
あの時、龍宮寺堅の面会に拘置所に来た帰り、すれ違った男。
言いようのない感覚があった。



武道くんが2005年へ戻った後に調べてみたらやはり過去に検挙した記録がある。



部屋の明かりを点け、申し訳ないと思いながらもスーツの上着を調べるとポケットから一円玉硬化程の丸い物。


「やはり発信機が…」

すれ違ったあの時に入れられたのだろう。


しかし、わざわざ警察関係者を狙うなんて余程の事がなければリスクしかないはず…



可能性を消去法で消して、行き着いたのは今回の件に灰谷兄弟が絡んでいるという結論だった。



なぜ名前を変えた彼女の所在がわかったのか




一度、本部に応援を要請し、彼女の部屋を出ると、アパートの敷地を歩道に向かって歩く男。



拘置所に来ていた昼間の男だった。




みすみす手がかりを逃すわけにはいかない！


考えるより早く体が動き、男を追って歩道へ急ぐ。



数十メートル走って、ようやく男を取り押さえた。
手錠をかけ、喚く男を引きずるようにしてアパートへ戻れば、付近を巡回していたであろうパトカーが一台。



警察関係者の事件のため、まだ事を荒だてるわけにはいかない旨を伝え、男を後部座席に押し込んだ。



病院へ行くように警官が促し、パトカーが去っていく。



僕も一度、彼女の部屋を見上げ、車に乗り込んだ。

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