【Doze or arousal?】 ページ46
(A視点)
ふわふわとした微睡みの中で、誰かに頭を撫でられた気がした。温かくて、とても心地いい感覚。ぬるま湯の海の中を沈んでいくようだった。
沈むにつれ、体に加わる程よい負荷は、追われて疲弊した体を包む。眠ってしまうには、丁度いい。
まだ、もっと、ずっと…このままで。
下へ下へゆっくりと落ちていく中で、対照的に上へ上へ、と浮いていくものが一つ。
それは、薄暗い海の中で、重力に抗い地上を目指すあぶくのようだった。
…追われて?
鈍い思考を働かせて思い返す。
そうだ。たしかに、私は、追われて逃げていた。
何から?
時計が巻き戻っていく。
打たれた薬、路地裏、絶えず走る、やるべきこと、強襲に倒れた二人。
降って湧いたのは、起きなければという使命感。
こんなところにいる場合じゃない!
思うのと行動するのは、どっちが早かっただろう。上っていく泡を追って、必死に藻掻く。先程まで、心地よいと思っていた重だるさは、途端に障害へと変わった。
仄暗い水の中で屈折して、ゆらゆら踊る光は、上においでと手招きしているようだ。差す光は、仏様が垂らした蜘蛛の糸。浮力を感じて、それへと一杯に腕を伸ばした。
「ん…!」
「お、目ぇ覚めたな。平気か?痛いとことか、ねぇ?」
「はっ!?え…な…んで?」
目を覚ますと、そこあったのは、予想外だった。思わず間抜けな声がでる。
車の助手席、少し倒されたシートの上。膝に掛けられたコート。聞こえるはずがない声。隣には、ハンドルを握る竜胆。
状況を理解できず固まっていると、信号で停車しているのをいい事に、ゆっくりと手が伸びてくる。
「もう着く」
ぽすんと頭に置かれた手は、くしゃりと一撫でして去っていった。
信号が青に変わって、車が動き出す。
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はいず(プロフ) - ATR214YSさん» ありがとうございます(*^^*)なかなか時間が作れず待たせしてしまい申し訳ありません!更新頑張りますので、またお時間のあるとは是非お付き合いいただけると嬉しいです! (2021年12月17日 20時) (レス) id: 99916fa5c7 (このIDを非表示/違反報告)
はいず(プロフ) - ttakedasaki0906さん» コメントありがとうございます!ゆるゆる更新でお待たせしてしまい申し訳ありません!これからも引き続き、更新頑張りますので、お時間のある時にお付き合いいただけると嬉しいです(*^^*) (2021年12月17日 20時) (レス) id: 99916fa5c7 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 待ってましたっ更新お疲れ様です! (2021年12月9日 18時) (レス) @page47 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
ttakedasaki0906(プロフ) - 楽しみに続き待ってます! (2021年12月7日 8時) (レス) id: 732dff87b6 (このIDを非表示/違反報告)
はいず(プロフ) - Marie Lunaさん» 温かいコメントありがとうございます!励みになります!時間の許す時に更新できればと思いますので、お暇な時にでもお付き合いいただけると嬉しいです(*^^*) (2021年11月19日 6時) (レス) id: 99916fa5c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はいず | 作成日時:2021年10月16日 13時