理由 / 白原富夫 ページ8
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『……わかんない』
「だから、この公式を使うんだってば」
『難しい』
「はぁ、」
彼がついた何度目かの溜息の原因は私。
明後日から行われる期末試験の勉強を教えて貰っているのだ。
とゆうか強制的にやらされている。
奇跡的に富夫と同じ学校に受かった私ではなかなか勉強に追いつくのは難しく、いつも成績は下の下。
『もー、やーめた』
「はァ?僕が態々教えてやってるのに」
『頼んでないもん』
態とらしく不貞腐れてそっぽを向くと頬を抓られる。
『いたたた、』
「早くやりなよ」
『……富夫はさあ、』
「何」
『なんで皆には優しいのに私には冷たいの』
前から思っていた少しばかりの不満をぶつけると富夫は暫く沈黙したあと、ゆっくりと口を開く。
「……Aはさ、皆と同じでいいの?」
『へ?』
「だからさぁ、Aだけ、なんだけど」
『うん?』
富夫のよく分からない言葉に困惑しているとまた溜息をつかれる。
「……ンとに、こんなに言ってもわかんないからAは馬鹿なんだよ」
突然の馬鹿発言に反発しようとするも、其れは富夫の唇によって塞がれる。
「これで分かった?」
眉間に皺を寄せる彼とは裏腹にやっと意味を理解した私の顔はみるみる熱くなった。
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喩羅 - めちゃめちゃ好みです!描写もストーリーも丁寧で、読んでてドキドキします!色々な作品を読んできましたがあなたの短編が一番素敵です、続きはもうないのでしょうか…( ; ; ) (2020年8月2日 0時) (レス) id: cefd911627 (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2019年2月2日 23時