28話 ページ49
手の次は腕かい。
またしばらく弓が握れなくなるだろうな。
こういう時に限って変に冷静なことを考えてしまう。
私の矢で怪我をしたオオカミを筆頭にして慌てて逃げ出していく三匹のセツゲンオオカミ達をぼうっと見遣りながらじわじわと傷み始める腕は見ないようにする。
が、駆け寄ってきた子どもたちが泣きながらなんどもごめんなさいごめんなさいと謝るものだから私もなんだか安心して涙がボロボロ出てきた。
慌てて笑いながら子どもたちに大丈夫だよと言うが私が泣いているのをみてさらにギャン泣きするので阿鼻叫喚である。
キツネの血の匂いを嗅ぎつけたオオカミたちはひどく腹を空かせていて、普段はこんなに人里近くに降りてこないのだが、もはやそんなことも言ってられなかったらしい。
子どもたちはキツネをとられるのを嫌がった。
「初めてとった獲物なんだ！お母さんに見せてあげたいから1匹はお家に帰ってお母さんに料理してもらいたいの！」
そう嬉しそうに笑っていた彼らが、うってかわってへっぴり腰でオオカミたちを追い払おうとしたところをそのうちの一匹が噛みつこうとしたのだ。
とっさに庇ったところをガブリとやられた。私は思わず叫びながら片手に持っていた矢を物理的に思い切りオオカミに突き刺したのだった。
しっかり首を狙ったので、今こそ逃げ出してはいるがどこかで力尽きてしまうだろう。そう考えるとまたやるせない気持ちになる。
後ろからザクリと雪を踏む音がして、怯えながらも子どもたちを庇って振り返ったらリンクがいた。
彼もここ最近は私の練習に付き合うために暇があればここに通っていた。おそらく今日もそのためにきたのだろう。
彼は私たちの様子がおかしいことに気づいていて、私の腕の怪我に気付くと顔を強張らせて慌ててエポナから降りてきた。
何も言わずに抱えるようにエポナに乗せられて風を切って走り出す彼女に揺られながら、ただ、リーバルのことを考えた。
いまどこにいるんだろう。すれ違わなければいいけど。
リンクの腕の中で空を見上げるとあの目を引く藍が空をスウッと抜けていくのが見えて、あぁ、これなら村にほぼ同時につくな、とまた冷静に考えた。
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おれんじ(プロフ) - リンクの口調もこだわりのひとつなので、そう言っていただけてとても嬉しいです…！！こちらこそ、素敵なコメントありがとうございます！たくさん読んでやってください(^^) (2022年8月17日 7時) (
レス) id: 6890ebcbdc (このIDを非表示/違反報告)
ナツメグ - リンクの口調がすごくしっくりきてめちゃくちゃ感動しました…！ゲームの中で喋っていないのに何故かとてもしっくりきたし、他のキャラクターの口調もゲームそのまんまで、テンションがすごく上がりました…！素晴らしい作品をありがとうございます！ (2022年8月14日 1時) (レス) @page14 id: 0329e434ac (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - 七竈さん» 嬉しいコメントありがとうございます！(^^)脳内再生嬉しいです！みんなとお喋りするつもりで楽しんでいってください(^^) (2022年5月10日 20時) (レス) id: 6890ebcbdc (このIDを非表示/違反報告)
七竈(プロフ) - キャラの口調がそのまま過ぎてキャラの声での脳内再生余裕で感動しました！ストーリーに惹き込まれてすっっっごく面白いです！！ (2022年5月10日 15時) (レス) @page50 id: 7180261b9c (このIDを非表示/違反報告)
おれんじ(プロフ) - まいまいさん» いやぁぁあ！めちゃくちゃ嬉しいです！読んでやってくださいませ！ (2021年3月19日 19時) (レス) id: 752c78450e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：おれんじ | 作成日時：2020年8月30日 0時
