あの日僕等は II

はじめの一歩 ページ25

無事にレクリエーションが終わって安心したのも束の間。
あれから仲良くなったイェリと並んで下校している途中、スーツを着た男性と女性の2人組に声をかけられた。

担当の先生が反響をみるために投稿した例の動画を確認したという男の人は、名刺を渡すと「是非、一度見学に来てください」と話して帰って行った。

残った女性から事務所の説明と見学についての話をされたようだけど、急な出来事に頭がついていかなくて気がついたらイェリが段取りを組んでいた。

「イェリ自身も少しの期間他の事務所の練習生をしていたそうで、やるもやらないも自由だけど兎に角知らないことには決められないからと、ボーッとしていた私の代わりに連絡先の交換や日程の調整をしてくれていました。

たまたま早く帰っていた父に相談したところ、あまり良い顔はしなかったものの一先ずは見学してみなさいと許可が出され、あっという間に約束の日になりました。


どうにか都合をつけて仕事を抜けて付き添ってくれた父と事務所を訪れて、邪魔にならない様に気をつけながらもいくつものレッスンを見させてもらったんです。

厳しい世界だとは知っていたので、見学はしても足を踏み入れることはないだろうとその時までは思っていました。

見学している最中に泣いている人を見ましたし、疲れ切った顔でそれでも練習する人たちを見て、やはりこの中に入るのは難しいな、と改めて思いました。

とてもありがたいお話ではあったけれども私には過ぎた誘いだからと、父にそう伝えようとした時に、最後の練習室に案内されたんです。

けれども、そこで一生懸命練習に励む人達を見て練習生になることを決めました。」




真摯にひたむきで、ともすれば苦しさを覚えるほどの必死さで、それでもキラキラ、キラキラ輝き出そうとしていた原石のような彼等。






「練習の鬼なところはあの頃からでしたね、スニョンさん、ジフンさん。」





あの邂逅がなければ、きっと今の私はいなかった。

感謝→←予感

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す