蜃気楼 ページ10
WZサイド
結果を残さなければという焦りから、どうしても次の曲が思いつかずに日々が過ぎていく。
言葉を書いては消して、音に物足りなさを感じては消して。
出口のない迷路に迷い込んで未だに彷徨っている。
SG「ヒョン、水分取ってください」
休憩に入り皆が思い思いに休んでいる中寝不足のせいか中々動かないでいると、スングァンが真新しいペットボトルを差し出してくれた。
SG「予備で持ってきていたんで、遠慮なく飲んでくださいね」
ほら、僕のこっちにあるんで、ともう片方の手に握った水を見せてくる。
「…悪い」
好意に甘えて水を口に含むと少しだけ頭もしっかりしたようで、今まで気にする余裕がなかった雑音が一気に耳に飛び込んできた。
いつの間にかマネヒョンが来ていてびっくりしたが、集まる様に言われスングァンの後ろに立つ。
「ヒョン、デビューできそうなグループなんていたっけ？」
爆弾発言に隣に立ったクプスヒョンに聞くも、ヒョンもわからないようで首を横に振って
SC「当分はデビュー予定のグループはないって前聞いたんだがな…」
不思議そうにマネヒョンの消えた扉を凝視する。
うちはそんなに大きな事務所じゃないから、俺たちがデビューしたら最低でも2年は他のグループはないと思ってた。
JH「まあ、挨拶来てるんだし見てみようよ」
マネヒョンが後ろを向いた瞬間にクプスヒョンに寄りかかったジョンハニヒョンが面倒臭そうに溜息をついた。
大好きなヒョンにくっつかれてニヤニヤしているクプスヒョンが嬉しそうに「そうだな」と頷いた。
MN「ほら、入れ」
マネヒョンが開けた扉から入ってきたのは3人。
HS「……ジュリ…？」
SG「え、…え、ホントに？」
あり得ない光景にざわつく俺たちをマネヒョンが注意すると、最初に入ってきた男か女かわかんないハニヒョンみたいな奴が挨拶を始めた。
JA「grab a dream!こんにちは、levです」
宜しくお願いしますと頭を下げる彼らにとてもじゃないけど拍手なんてできる雰囲気じゃなくて。
WN「…なんでオマエがここにいるんだよ」
ウォヌの常よりさらに低い声に凍りついたように室内が静まり返る。
JA「なんでも何も、今度デビューが決まったので挨拶だけはと思って伺ったんですがねー。
オマエとかどの口がそんな言葉吐いてんだ、あ？」
挨拶した奴が更に低音で返してきてようやく男だと確信する。
一触即発の空気にマネヒョンが
MN「とりあえず自己紹介だけしろ」
と間に入った。
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作者名：にゃしろ | 作成日時：2021年2月1日 21時
