全てを賭けて ページ41
JAサイド
ジュリが退院してから僕は練習室に通うことを控えていた。
いつ体調を崩すかもわからなかったし、何よりジュリが大事だったからだ。
体調が安定しミンハオとTV電話が出来るようになった頃、少し買い出しのために出かけて帰ると、ジュリが歌っていた。
囁くように、泣いているみたいな、それでいて優しい声で窓の外をじっと見て歌う姿が、本当に綺麗で一瞬息が止まった。
それから僕が何かしらの用事で家から離れ静かに帰宅すると、歌っている姿が増えていった。
歌詞がついているものもあればメロディーだけで鼻歌の時もあったけど、その全てが聞いた事がない曲だった。
ジュリが怯える事なく生きていけるなら、このまま2人で閉じこもったままでも問題ないなんて、僕の驕りだった。
あんな事があって尚、彼女は歌い続ける。
カゴの中の鳥なんて、似合うような子じゃなかったんだ。
そして、半ば盗撮のような形で歌うジュリの動画を撮り、事務所宛とソジニヒョン宛に送った。
悲しいことばかり続いて、辛い思いを沢山して。
それでも前を向こうと振り向かず歩き続けるキミを、閉じ込めて守りたいだなんて、とんだエゴだった。
彼女は歩き続ける
たとえ道がなかろうとも
その身が引き裂かれ続けても
命ある限り
「毎月最低でも一度、歌とダンスの練習風景を送るので評価してください、と添えてメールを送ったんだ。
ジュリにもう一度デビューに向かって頑張るのか聞いて…答えなんてわかりきっていたけれどね。
そこから暫く練習していなくて落ちた体力を付け直して、ボイトレをまた発声からやり直して。
ヒョンにダンスの欠点を指摘して貰ったり、まあがむしゃらに走り続けて、今に至るわけだよ」
SJ「ジュアンが調整役として電話やらTV電話、それでも足りない時は直接事務所やら俺のとこのダンススタジオまでやってきてな。
その動画を毎月見ていた代表とボムジュ氏、そして俺でデビューに相当すると判断したんだ。
それがちょうど3ヶ月前だ」
ジュリにもう一度デビューを目指すか聞いたとき、あの子は言ったんだ
「オッパ、私の目指す目標はデビューじゃない。
だから、まずはスタートラインに立たないといけないの」
だから、
全てを賭けて、掴み取る。
必ず
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作者名：にゃしろ | 作成日時：2021年2月1日 21時
