あの日僕等は (ページ2)

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来たる時ページ2

見慣れた事務所に見慣れたスタッフさん。

けど、よく見れば観葉植物が増えていたりデスクの向きが変わっていたり

仲が良かったオンニが結婚を機に辞めてしまっていたり、学校の送迎をしてくれたオッパは少しお腹がぽっこりしたようだ。

あの日止まった記憶が鮮明に色づいて動き出す。

　さらさらさら

　さらさらさら

私の伏せられたままの砂時計は
今日、この時から再び息を吹き返す。

「大変ご迷惑をおかけいたしました。これからまた頑張りますので、宜しくお願い致します」

代わる代わる顔を出してくれる懐かしい顔に挨拶をし、頭を撫でられ肩を叩かれ、其々の激励に知らずに笑みが溢れる。

？「あ、なーに笑ってんのよ、もうっ」

「だって、オンニたちにまた会えて嬉しくて」

？「はいはい、会えてよかったわねー。こっちなんて今日のために毎日毎日、まーいにちおーんなじ顔としか会ってないんだから、もうお腹いっぱいよ！」

文句言いながらも背中を撫でる手はいつも通り優しくて、昔を思い返して少し涙が出そうになる。

？「泣かないの。涙はまだ流す時じゃないでしょ」

まったく、なんて言って心配そうに顔を覗きこんでくる。

「はい、オンマww」

？「きー！失礼しちゃうわね！まだそんな歳じゃないわよ！！」

ST「いや、突っ込むところそこじゃないだろう。
兎に角、ここはもう大丈夫だから社長室に行ってきなさい。もうそろそろ時間じゃないのか？」

オッパに言われて時計を見ると約束の時間ギリギリだった。
いくら同じ建物内とはいえ少しまずい状況に急いで身支度を整える。

？「よし、いいわね。アタシはどう？変じゃない？」

「ちょっと前髪が…OK」

手を伸ばすと少し屈んでくれたので猫っ毛な前髪を綺麗に整える。

？「ジュリ、笑いなさい。アンタが笑えばどんな状況だってそれがベストになんのよ」

いい？と2人で手を繋ぐ。
静まり返った廊下を早足で進む。

あの冬、底冷えする廊下を息を乱して、いつも気を使ってた前髪なんてぐちゃぐちゃなままで汗を浮かべて、この人だけが手を繋いでいてくれた。

「ありがとう、オッパ」

？「何言ってんの。こっからなのよ、こっから！お礼を言うのは然るべき時にしてちょうだい」

もう、急になんなのよと一息ついて扉をノックする。

？「失礼しまーす」

そうだね、でもきっと
私にとって今日が来たる時のはじまり。

「お久しぶりです。代表」

止まった時を元に戻す第一歩だ。