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放課後。
体育館シューズを手に、晴子たち3人と共に体育館へ向かう。
結局あのあと…
「九井ちゃんのプレーも見たいわ!練習前ならみんな自主練してるから、そのときとかどうかしら!」
と晴子の提案を断ることができず、バスケをする羽目になってしまった。
うちは男バスしかないのよね…と落ち込む晴子だが、バスケへの後ろ向きな気持ちに加え、しばらくボールを触っていないことからの不安感でいっぱいだった。
体育館のドアを開けると、1年生と思しき男子3人がモップをかけているところだった。
3人は、自分たちより身長の高い見覚えのないジャージ姿の女子に驚いた様子だったが晴子が事情を話すと、ここモップ終わってるから…とコートを貸してくれた。
怪我をしないよう、軽く身体を動かす。
動きにあわせて、邪魔にならないよう束ねておいた髪が揺れる。
三人のうち、坊主頭の眼鏡をかけた男子がボール、7号しかなくて…と1つ手渡してくれた。
女子は本来6号ボール、男子が7号ボール…1周り大きいボールであることを彼なりに気にかけてくれたのであろう。
しかし、むしろ九井にとっては都合が良かった。
坊主頭の彼にお礼を言い、ダム…とボールをつく。
体育館に反響するドリブル音が、やけに脳を揺らした。
ふぅ…と息をついて、ボールを掴む。
そこは、スリーポイントラインの頂点だった。
ボールに回転をかけてバウンドさせ、キュ…とステップを踏みシュート体勢に入る。
…九井にとって、1番大好きで、大切なシュート。
ワンハンドフォームで、3Pシュートを放った。
九井の右手から放たれたボールは、高く弧を描きゴールへと吸い込まれるように飛んでいった。
スパッ…
リングに掠ることなく通ったボールが、ダン…と地面に打ち付けられる。
そのシュートの美しさに、晴子らや1年生たち、そして部室から体育館に入ってきていた青年も目を奪われていた。
シン…と体育館が静まり返っていた。
入ったことに安堵し、ふぅ…と一息つく。
ボールのバウンドが弱まっていって床に転がるまで、誰も一言も発せずにいた。
ようやく口を開いたのは晴子だった。
「……すごい。」
距離をおいて見ていたところから、ゆっくりと歩み寄ってくる。
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時