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「ふぬ!転校生!ハルコさんのクラス…いいなぁ…」
晴子が親しげに話す姿に、怖がる存在ではないのかもしれない…と少し肩の力が抜けた。
「あいつらね、桜木軍団っての。見ての通りヤンキーではあるんだけどね。まぁ悪いヤツらではないと思うわよ。」
松井にそう諭され、再び腕を掴まれ屋上の奥のほうへと引っ張られる。
「や、ややや、やんきー………」
「大丈夫だって!あとね、この赤頭バスケ部入ってんのよ。」
バスケ部、という言葉に息を呑む。
座っている姿からしてもとてもいい体格をしているが、赤く染め上げた髪をリーゼントにセットしている。
彼はとても、バスケットマンには見えなかった。
先日の練習試合でのことを、晴子や赤頭の彼が嬉々として話している。
「センドーは俺が倒す!」
そう意気揚々と叫ぶ赤頭の彼の、そのひたむきな明るさを眩しく感じた。
「そーいうココノイさんは、バスケとかやってなかったの?すごくいい身長してるしさ!」
先程の黒髪リーゼントの男が気さくに話しかけてくる。彼なりに怖がらせないように微笑みかけてくれているような気がした。
「あ…うん…一応、中学までは…と、隣失礼しますね。」
弁当を手に、軍団と少し距離を開けて座りながら言う。
「えー!?そうなのォ!?」
誰より大きい声で反応したのは晴子だった。
「私も、中学までやってたのよー!桜木くんはね、高校からバスケ始めたけどすごいのよ!お兄ちゃんがバスケ部のキャプテンでね、それでね!」
「は、ハルコ落ち着いて…」
興奮した様子の晴子を藤井が宥める。
「じゃーココノイさんも、バスケ部見に来たらいいさ。ハルコちゃんと一緒にさ。」
「そうよぉ!それがいいわ!ね!放課後一緒に見に行きましょ!」
張本人が蚊帳の外で、放課後の予定が決められてしまった。
まぁ、いいか…と広げた弁当箱から卵焼きをひとつ口に運ぶ。
肩身の狭い思いをしながら、少なめの弁当を平らげた九井であった。
…この後、体育館に行ったことを後悔することになるとは知らずに__
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時