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タイムアウト明け、翔陽のオフェンスからはじまる。
宮城のスティールにより、再び速攻と思われたが、翔陽の戻りが早くなった。
「ディーフェンス!ディーフェンス!」
「ん…これは、1-3-1(ワンスリーワン)ゾーンディフェンスかな…?」
翔陽のディフェンスが、マンツーマンからゾーンに変わった。
たとえるなら、人ではなく、場所で守るようなディフェンスだ。
中でポジションをとる赤木にボールが渡ると、ダブルチームで圧がかかる。
攻めあぐねる赤木を呼ぶ、男らしい声が聞こえた。
赤木から、三井にボールが渡る。
「おし!!」
スリーポイントラインの外から、キュ…と足を揃え、高い打点から放たれるそのシュートは、あまりにも美しい弧を描いてリングに吸い込まれていった。
パシュッ…
「よォーっしゃあ!!!」
「みっちゃん…!」
三井のスリーポイントによって、11-11と同点に追い付いた湘北。
会場がざわざわと、三井の噂をしているのが観客席の九井たちの耳にも入ってきた。
「あいつは3年前に全中に出場したあの武石中の4番だ!」
「MVPのあの三井寿だ!!」
「三井寿!!」
「あの三井寿か!!」
「あいつが湘北にいてなぜ今まで出てこなかったんだ!!2年間!!」
ざわめくギャラリーに、野間が小さな声で「それはグレてたから」と答えた。
そらそーだ、と思わず九井たちも吹き出してしまった。
まぁ、人相も変わってるし…という言葉は胸にしまっておいた。
ス…と翔陽のベンチに腰掛けていた藤真が羽織っていたジャージを取り立ち上がった。
ザワ…と翔陽の部員を中心にどよめいた。
ついに藤真を引きずり出せる!そう思った束の間、そう簡単にはいかせてくれない花形という男がいた。
「さあ気合いれていくぞ!翔陽の力を見せてやる!」
そう叫んだ彼に翔陽の選手らも続き、インサイドに切り込みシュートを放った。
ボールはリングに弾かれたが、リバウンドを取ったのは花形だった。
そしてそのまま、ボールをリングにねじこんだ。
観客席が一層盛り上がる。
藤真はそんな姿を見て、満足そうに席に座り直した。
「あ〜…引きずり出せそうだったのに…」
「さすがシード校、そう簡単にはいかないのね…」
九井は松井たちとともに、固唾を飲んで試合の展開を見守った。
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時