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宮城の活躍により点差を8-11まで詰め寄った湘北。
得点した宮城は、翔陽ベンチの藤真をビシッと指差した。
翔陽はまだリードしていたが、藤真はタイムアウトを選んだ。
「翔陽の監督って、今タイムアウトとったあの人…？選手に見えるけど。」
そう問う水戸に、九井は頷いた。
「そう、今の翔陽の監督はあの人。選手兼監督の藤真さん…。」
「大変そうね…Aはよくそんなこと知ってるのね。」
そう関心する松井に、九井は目を伏せた。
「翔陽に今監督がいないのは…私のせいかもしれないから。」
「え…？」
目を丸くする晴子らに、九井は自嘲気味に笑った。
「ちゃんと話すと長くなるから、簡単に話すねっ。」
翔陽ベンチに目を向けながら、九井はポツリと語り始めた。
「翔陽の去年までの監督、私のお父さんだったんだ。全国常連校の監督…結構有名だったみたい。」
九井はひと呼吸置いて続けた。
「でも今年から、女バスの監督になったの。私が転校する前の高校のね。」
九井はそう言って目を瞑った。
「それってさ、ココノイさんのバスケを指導しようとしてたってことか？」
水戸が前のめりになって聞いてきた。
「うん…たぶんそう。あの人、私のバスケットにすごく干渉して来て…。進学先も半ば無理やり決められた感じだった。もう高校ではバスケやらない！って言ったら、見限ったみたいに湘北に転校させられたってわけなの。」
九井が眉をハの字にして笑った。
「なんで翔陽の監督やめたのって聞いたとき、お父さん言ってたの。1年からスタメンの藤真なら、監督こなしながらでも活躍できるだろうって。1年もすりゃあ新しい監督見つけるだろう…ってさ。酷い人よね。」
悲しそうに笑う九井の手を、両隣の松井と藤井がそっと握った。
九井は少しびっくりした様子だったが、すぐ恥ずかしそうに笑った。
「別に気に病んでるわけじゃないよ！…でも、ありがとね。」
タイムアウト終了のブザーが鳴り、審判の笛が響く。
「結果は結果！今は翔陽は監督不在。はやいとこ藤真さんを引っ張り出して勝負持ち込まないと！応援頑張るぞ〜！」
九井はそう笑って、握られていた松井と藤井の腕ごとバンザイした。
言葉を失っていた晴子らも、コクリと頷きコートに戻る選手らに目を向けた。
「ガンバレ湘北ー！」
九井たちの応援は、会場の声援と混ざり合っていった。
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作者名：宮永 | 作成日時：2023年7月18日 15時
