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赤木のジャンプボールから始まる。
赤木の正面に立つ翔陽の5番…花形とコールされている彼は、体型こそ赤木と比べると細身ではあるが、身長は赤木と同じくらいに見えた。
「あのメガネ、ゴリと同じくらいじゃねーか!」
「デカいのばっかりだ!花道が普通に見えるぜ!」
「ホントだわ…」
桜木軍団や晴子らも、翔陽の高さに困惑した様子であった。
花形コールが止まない中、審判の手からボールがまっすぐ上げられていった。
赤木と花形が跳び、赤木がボールを弾いて桜木がキャッチした。しかし…
「あ、これは…」
嬉しそうな晴子をよそに、九井は異変に気づいた。
途端、審判の笛が鳴った。
「ジャンパーバイオレーション、白4番!」
反則を取られ、翔陽ボールからのスタートとなってしまった。
「ジャンパーバイオレーション…お兄ちゃん、珍しい…」
「赤木さんじゃなくても珍しい反則ではあるね…私も1回やったことあるけど…」
九井は目を伏せて言う。
湘北にとって、初めてのこんな大歓声の中での試合…おそらく赤木も浮足立ってしまったのだろう。
「この雰囲気に、呑まれないといいんだけど…みんな。」
九井のその予感は、悪い方に的中してしまうのだった。
翔陽ボールからのスタート。湘北のマンツーマンディフェンスだが、どのマッチアップも翔陽が高さで劣ることはなかった。
168cmの宮城の上を、簡単に通される。
翔陽の5番…花形透にボールが渡った。
シュートブロックしようと飛ぶ赤木だったが、花形は蝶のように可憐なフェイダウェイショットで特典を奪った。
「っ…すごい…」
あまりの美しさに、九井は思わず声を漏らした。
自身のセンターの経験とも重ね合わせ、花形がどれだけすごい選手なのか、この歓声の理由…それがこのワンプレーでひしひしと伝わってきた。
湘北のオフェンス、翔陽のディフェンスは、ゾーンに近い中を固めたマンツーマンディフェンスだった。
流川から、インサイドでポジションをとる赤木にパスを出すが、上からのパスは、高さのある翔陽には通じず、パスカットされてしまうのだった。
「バスケットって…」
小さくつぶやいた九井に、晴子らが視線を向ける。
「バスケットって、残酷なスポーツだよね。高さってだけで相当なアドバンテージになる…。」
九井はそう自嘲気味に笑った。
「でも、湘北が勝つって私は信じてるよ。高さだけじゃバスケットはできないんだから…!」
九井はそう言って拳を握りしめた。
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時