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「よしついた、ここよ!」
階段を登りきった先で松井がドアを開けると、広々とした空間が広がっていた。
「屋上…」
「そ!せっかくだし今日はここで食べよ!」
そう連れられ屋上に1歩踏み出すと、柔らかい風が頬を撫でた。
こんな気持ちいい場所でお昼食べられるなんて、嬉しいな…
そうぼんやりと考えていると、後ろから声をかけられた。
「あら、松井ちゃんに九井ちゃん!先に来てたのね〜!」
「あ、赤木さんに藤井さん…」
クラスメイトである彼女ら2人は松井と仲が良いようで、授業間の休み時間に気さくに話しかけてくれた。
彼女らも松井と同様、他のクラスメイトと違い興味本位ではなく善意で話してくれているのが九井本人にも伝わり、3人とは少し打ち解け始めていた。
「屋上気持ちいいのよぅ〜!だからいつも人気で…あれ、今日は人が少ないわね…」
「あ、晴子…あれ…」
藤井の言葉に屋上の隅に目をやると、男の5人組が円になって座っていた。
「出た、桜木軍団…奴らがいるから人少ないのね、今日は…」
「怖い人たちじゃないのにねぇ…桜木くーん!」
晴子が5人組に声をかけ近づくと、その中の1人…髪の赤い男が「ハルコさん!!」と顔を紅潮させて振り返る。
残る4人も振り返るが、彼らの形相は決していいとはいえなかった。
ヤンキーだ…
そう気がつくと、屋上に踏み出す足が止まってしまった。
「桜木くんたちも、今日は屋上でご飯食べるのね!」
「アハ、ハルコさんもですかぁ、アハ、アハハハ!」
ヤンキー軍団?と仲良しげに話す晴子にさらに固まってしまう。
あの子…あんな可愛らしい見た目で…そっち系とつながりが…!?
そんな思考がぐるぐると広がる中、松井がそっと肩に手を置く。
「あーまぁ、気持ちはわかるわ…けどま、大丈夫よ」
そう微笑まれ、再びヤンキー軍団に目を向けると、黒髪リーゼントの青年と目が合う。
「あれ…そっちの彼女、見ない顔だね?」
彼にそう見据えられると、ビクリと身体が反応する。
顔は笑っているのに、何か本質を探ろうとしている…そんな目をしているような気がした。
他の4人も九井に気づき、視線を向ける。
「おい…大楠くらいあるんじゃないか…」
「おぉ!クールビューティー美女!」
「でけーねーちゃんだな…3年生?」
「…ぬ?」
4人が口々に声を上げると、晴子が踵を返し九井の元に戻ってくる。
「この子はね、九井Aちゃん!うちのクラスの転校生なのよぅ!」
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時