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5月19日
バスケ部はインターハイ予選の1回戦に挑む日だった。
しかし、バスケ部以外の生徒は授業がある日のため、晴子や九井らは応援に赴くことができないのだった。
そわそわしてしまい、早めに起きてしまった九井は住宅街をランニングし始めた。
しばらく走って汗をかきはじめたころ、向かいから見覚えのあるシルエットが歩いてきた。
「ん…?あれ、みっちゃん…」
九井より少し大きな三井は、九井に気づくと よ!と右手をあげた。
「今から会場向かうところですか?」
足を止めてそう聞くと、「おうよ」と笑った三井。
その口元には、以前なかった前歯があった。
歯、入れたんだな…と思うも、敢えて触れずに続けた。
「三井さん戻っちゃったら、湘北強すぎて相手可哀想かも。」
そう茶化して言うが、三井の表情は浮かないものだった。
「お前さ…その気持ちわりぃ呼び方なんなんだよ」
「…え?三井さん?のこと?」
九井が聞くと、三井は首を縦に振る。
「っあー、別に、あのときみたいでいいんじゃねぇか。敬語とかもよー…いらねぇし…」
そう頭を掻きながら言う三井は照れているようで、九井はなんだか優越感を感じてしまった。
「くすっ…じゃあ、ふたりの時だけね、みっちゃん。試合頑張ってね!」
そう言い残して、九井は走り去った。
「あっおい!」
三井が止めようとするのを無視し、足を止めることなく自宅へと向かった。
その甲斐あって、赤くなった頬や耳を見られずに済んだのであった。
そろそろ始まる頃かな…
教室で頬杖をつきながらそんなことを考える。
新しく届いた制服に、新しい教科書。
目の前の授業なんかより、バスケ部の試合のことが気になってしょうがなかった。
みっちゃん、久々に試合に出られて嬉しいだろうな…みっちゃんが3年越しにみんなに見つかっちゃうかな?
そんなことを考えて、1人でニコニコと笑っていた。
ノートの隅に、届くことのない『がんばれ』の文字を書いて。
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時