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「そんじゃねハルコちゃんココノイちゃん」
「うん、じゃーねえバイバイ!」
そう言って、水戸らと別れた晴子と九井。水戸らはそのままパチンコ店に流れて行った。
「…彼らはいつもああなの?」
「楽しそうでいいわよねえ!」
「…………………………………そうだね。」
この子の天然は底が知れないな…と思いながら、差し入れを手に湘北高校へと足を進めた。
「ハロー!差し入れでーす!!」
そう言い晴子が体育館に入ると、桜木が「ハルコさん!!」とよそ見をしてゴール下のシュートを外したところだった。
「見てくれましたか今の!?この天才桜木のパワフル&華麗なゴール下!!」
「バカタレ!入っとらんわ!」
顔を赤らめる桜木を殴りつける赤木。
九井もそっと差し入れのドリンクを持ち晴子の横から体育館に入った。
「晴子ちゃん気が利くわねー!あら!Aちゃんも一緒だったの!」
マネージャーの彩子がそう声をかけてくれる。一度会っただけだと言うのに名前も顔も覚えてくれて、気さくに話してくれる彼女の優しさに、思わず上ずった声で返事をしてしまう。
「あっ、はい!」
「へへへ 試合も近いし!桜木君ものんでね。みんなの調子は…?」
「絶好調桜木!!と呼んでください!!」
晴子の問いにそう桜木が笑って答えると、流川が強烈なダンクをかました。
「ルカワクン絶好調〜〜〜♡」
と、晴子の顔が一瞬で乙女モードに入ってしまった。
「サボってんなどあほう」
「ルカワ…!!」
あんなに血を流した数日後だというのに、彼の身体はどうなっているのか…と九井は静かに笑った。
ふと視線を感じ振り向くと、そこには髪を短く切った三井が立っていた。
三井と会うのは、あれ以来初めてだった。
「…三井さんっ」
三井の元に歩み寄り、名前を呼んだ。
「…髪、切ったんですね。セットまでしちゃってェ!」
そう笑うと、少し神妙な面持ちをしていた三井もつられるように笑った。
「るせぇ!お前は身長だけじゃなくて態度もでけーのか!」
「キャー怖い!元ヤンこわーい!」
…約3年ぶりとも言える会話だったが、当時と変わらない温度で話すことができた。
一度は彼は変わってしまったかもしれない。でも、彼の心を繋ぎ止めてくれていたのは、やっぱりバスケットだったのだ。
「三井さ…、みっちゃん!」
昔のように彼の名を呼んだ。
「……おかえり。」
泣きそうになるのを堪えて言うと、三井は少し恥ずかしそうに返した。
「…ただいま。」
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時