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再び三井と目があった瞬間、九井は涙を流していた。
視線はすぐに逸らされてしまったが、三井は確実に九井を認識していた。
あのとき、1番辛かったとき、どうしていいかわからなかったとき、支えになったのが、“あの人”の存在だったのだ。
涙が止まらなくなり、晴子を支えながらゆっくりとしゃがみこむ。
その様子に気づいた松井と藤井が、声をかけ心配してくれるが、九井は必死に声を抑えて涙を流すことしかできずにいた。
『君の悩みはわかんねーけどさ、バスケのことは好きなんだろ？』
『体格いいのだって立派な才能だろ。』
『あはは！オレとシュートフォームそっくりになっちまったな！』
あのとき笑いかけてくれた彼の笑顔が、脳裏に流れ出す。
なぜ泣いているんだろう？
彼が変わってしまったから？
辛かったことを思い出したから？
会えたのが嬉しいから？
自分でもわけがわからず、漏れでる嗚咽をジャージの袖を噛んで抑えこんだ。
気づくと晴子も目を覚まし、動揺しながらも3人で九井の背中を擦るなど慰めようとしてくれていた。
…どれくらい泣いていたのかわからなかった。
涙が収まってきて顔を上げると、晴子が「大丈夫？」と顔を覗き込んでくる。
「ごめんね…もう大丈夫。」
泣きじゃくって汚い顔であろうことを恥ずかしく思いながら、目を見て答えた。
ゆっくり立ち上がり、どうなっているだろう、と目を向けると、締め切った体育館のどこから入ってきたのだろうか、桜木軍団の4人が喧嘩に参戦していた。
1対1で不良たちをいなしていく桜木軍団だったが、水戸は三井に声をかけていた。
「来な。」
「小僧…死にてーらしいな…。」
三井がそう水戸を睨んだ次の瞬間だった。
ガ パッ
水戸の拳が、10cm以上体格のいい三井をふっ飛ばした。
「っ…！」
恩人である彼が水戸に殴られる様を、見ることしかできなかった。…いや、見ていることすら、辛かった。
「ぐっ…くそ…なんなんだてめえは…！バスケ部でもねーのに…関係ねーだろてめーには！」
そう言う三井を容赦なく殴り続ける水戸。
昼間話したときは温厚そうに見えたが、ここまで冷徹に拳が振るえる人なのだと思うと、あのとき感じた不気味な恐ろしさが間違っていなかったんだと思った。
「く…くそ〜…くそ〜〜〜…」
肩で息をする三井の胸ぐらを掴む水戸。
「もうバスケ部にはかかわらないと言え。この体育館には二度と来ないと言え。」
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作者名：宮永 | 作成日時：2023年7月18日 15時
