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「がはっ!!ぐぁ……」
鳩尾を抑え前かがみになる竜の顎を下から殴る流川。
ものすごい音とともに竜は床に倒れ込んだ。
「やっちまった…あのバカ…」
ついに、バスケ部からも手を出してしまった。
このことがバレたら、本当に大変なことに……。
「は、晴子!!」
「赤木さん!」
晴子が気を失い倒れるのを、藤井と九井で支える。
「やりやがったな!!ははははは!とうとう手を出しやがったな!!これでお前らも…」
そう言い笑う三井の顔を思い切り殴る流川。
九井は晴子を抱きかかえながら、流川に頭を掴まれる三井に目を向ける。
_あの印象的な目元、あの印象的ないい声、“あの人”にとっても似ている。
それに、三井って名前…もしかしたら……。
でも、どうして?あんなにバスケットが大好きで、私をバスケットから救ってくれた、あの人が…どうしてバスケ部を潰そうとしているの…?
三井を見ながら考えていると、ふと三井がこちらに目を向けて来て目があった。
…一瞬、時が止まったかのようだった。
目があった瞬間に、確信してしまったのだった。
三井も一瞬、目を見開いていたような気がした。
「……みっちゃん…?」
その声は、流川がタンクトップの男に投げ飛ばされる音にかき消され、三井もすぐ視線を逸らしてしまった。
「はっ」
「赤木さん!」
「気がついた?」
目を覚ました晴子だったが、大量の血を流し倒れる流川を見て、再びくらっと倒れ込んでしまった。
「は、晴子!」
「赤木さんっ!」
気を失った晴子を介抱し、藤井と松井とともに体育館の隅で縮こまる。
その最中にも、タンクトップの男に部員たちが次々とやられていった。
木暮の指示によって体育館とドアがすべて閉められ、九井たちも逃げることができなくなってしまった。
自分たちは女で力もない、どうすることもできない。ただただ巻き込まれないようにしていなければ…
そう息を潜めていると、マネージャーと思われる女子生徒が男に立ち向かって行った。
「いいかげんにしなさい!何考えてんのあんたたち!」
「あ、あぶないアヤちゃん!でてくるなぁっ!」
止める宮城だったが、タンクトップの男はニヤリと女子生徒を見据えた。
「次は女か…?いい女だな…オレの好みだ。」
「…オレも好みだ………」
タンクトップの男に続いて三井もそう言うが、次の瞬間、九井に目を向けた。
「いや…」
三井が何か言いかけたが、竜の「オレも…」の言葉で九井に届くことはなかった。
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作者名:宮永 | 作成日時:2023年7月18日 15時