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「…どうしました?」
「…!い、いや別に…」
「別にっていう様子じゃないから言ってるんですけど」
「うぅ…。な、何かさ、こうちゃんとは波長が合うからこうやって話せるんだけど、他の人となるとそうはいかないかなって。僕のこと、迷惑だって思ってる人もいるかもしれないし…何より、僕何もできないし。」
あぁ。やっぱりか。この人は本当に一人で抱えやすい。
記憶が無くなっても性格というものはあまり変わらないのか?
「そんなに心配しなくても大丈夫です。」
「…なんで?」
「行ってみたらわかります」
「変なの。」
「変でいいです。ほら、もう着きましたよ。」
疑問を顔に浮かべている彼の手を引っ張って、タクシーから出る。
少しでも安心してもらえるように手を掴んだまま笑いかけると、山本さんも表情が緩んだ気がした。「やっぱりこうちゃんって変。」と言われてしまったが。
「おはようございまーす」
「失礼します…」
「「「…!?山本!!」」」
二人でドアを開けて中に入る。皆がこちらに勢いよく振り向き、俺らだと分かると一斉に近づいてきた。
「「「おかえり〜!!」」」
「わっ、!」
皆が山本さんにがばっと抱きつき、応援の言葉をかけている。
その温かい言葉に山本さんもほっとしたようで、顔を綻ばせていた。
記憶喪失になったことは以前から伝えてあった。そのときも皆山本さんのことも、俺のことも心配してくれ、「頑張ろう」と声をかけてくれた。良い仲間を持ったな、と改めて実感したものである。
「俺、伊沢拓司。この会社の社長で──」
「あ、知ってます、!伊沢さんはこうちゃんから教えてもらって、」
「…そっか!じゃあよろしくね!」
「…!!?…は、はい」
伊沢さんはまたもや山本さんに抱きついていた。ちょっと近くない?なんて考えは頭の隅へ追い出した。
山本さんは色んな人に話しかけられているので、俺の出る幕は無いかな、と思って荷物を置きに行く。そうすると、肩を叩かれる感触がした。
「須貝さん?」
「ごめん。ちょっと良い?」
「はい、全然。」
話しかけてきたのは須貝さん。真剣そうな顔をしているため、大事な話なのだろうか。
「あ、あのさ…付き合ってるってこと山本には言ったの?」
「いえ…負担になると思ったので言ってないです。」
「……そっか。うーん…じゃあさ、俺が山本のこと奪ってもいいってこと?」
「………………え」
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作者名:ハル | 作成日時:2021年2月10日 20時