痛くない、けど痛い。【ヒロアカ】 (ページ9)

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８話ページ9

焦「……A、大丈夫か？」

『全然平気』

私は痛くならないから、いつもストレッチのときは足を１８０度広げて体をぺったりつけられる。

でも私も、自分自身の限度が分からないから、焦凍が手を離すまでやり続ける。

焦「…こんくらいでいいだろ」

『うん。ありがと焦凍』

焦「おお」

そのあと、腹筋とか腕立てとかを交互にやって、休憩した。

私は大の字になって畳に寝転がり、目を閉じた。

『……』

畳のいい匂い。落ち着く。

いかんいかん、また寝ちゃうとこだった。

ガバっと起きて焦凍を探す。

だけど視界には誰もいなくて、焦って立ち上がったら隣に焦凍がいた。

横になって寝ていた。

『ありゃりゃ…』

ここでこのまま寝かせるのはかわいそうだし、部屋までおくってくか。

『…いしょっと……』

焦凍をお姫様抱っこして、廊下を歩いていた。

すると丁度、大広間からお父さんがでてきた。

エ「……何をしているA」

話しかけられた。

『何って……寝ちゃった焦凍を部屋まで運ぼうとしているだけだよ』

簡潔に伝えた。

一瞬キョトンとしたかと思うと、お父さんはまたいつもの様子に戻った。

エ「……そうか。それよりA。さっきの訓練の続き、やるか？まだ相手をしてやってもいいが…」

結局、それなんだね。お父さんは。

『…………いや、今日はもういいや。また明日お願いするよ。』

エ「そうか…わかった。そういえばちゃんとストレッチはしたか？」

『したよ、焦凍と一緒に』

エ「よし。じゃあまた明日な。なるべく早く寝ろよ」

こういうとこはお父さんらしいな、とか思うけど、

エ「明日も朝からあるんだからな」

この言葉を聞いてしまうと、やっぱり私たちってお父さんの道具にしか過ぎないんだなって思っちゃう。

私は声の調子を変えずに『わかったよ。おやすみ』と言って再び廊下を歩き始めた。

焦凍の部屋に着くまでそう遠くはないが、ウチは廊下が長い、らしい。

前に友達を家に呼んだことがあったけど、そのときに「クソなげえ」「レッドカーペット敷きたい」とか言われたんだよな。

結局部屋に着いても焦凍は起きず、私は勝手に部屋に入った。

……いや勝手とは言わないよね。親切心でやってることだし。

私は布団をだして、焦凍を優しく乗せた。

その寝顔が…………とても、美しかった。