６話 ページ7
入りすぎた。
一時間以上もお湯に浸かっていたらしい。
着替えて廊下を歩いていると、視界がくらくらして、まっすぐ進めない。
これは、よくあることだ。
温度も感じないから、体温調節ができない。だからよくのぼせてしまう。
姉さんによく注意されてるのに、またやっちゃった。
考え事してて、長湯してた。
『とりあえず飲み物を……。』
ゴン、と大きな音がした。私のすぐ右で起こったような。
右の頭になにかぶつかったのかな。
焦「…A！」
『……焦凍？』
後ろから声をかけられ、振り向くと焦凍が少しびっくりしたような顔でこっちを見ていた。
焦「今、壁に頭ぶつけてたぞ。自分だって分からなかったのか」
え、さっきの音って私だったの？
『…き、気付かなかった』
焦「………はあ。お前、またのぼせただろ。顔が真っ赤だ」
そういって、焦凍は自分の右手を私の頬に当てた。
もし温度が分かったら、この手はどんな温度なんだろう。
……分からない。
『…とりあえず、水か何かを飲んでくるよ』
焦「……そうか。なら一緒に行こう。一人じゃ危ないからな」
いやここ家だけどね。
心配してくれるのは嬉しいけど、私たちさっきちょっとケンカしたんだよ？
そのことについては、何も思ってないのかな。聞いてみたい。
『ねえ、焦凍……』
焦「わりい」
？
なんで、何も言ってないのに謝られたんだろ。
焦「……さっき、親父の前だったこともあって、Aにきつく当たっちまった。」
同じこと考えてた。
『…私のほうこそ、ごめん。あんな態度とって。』
沈黙。
こういうのはよくあることだ。
ケンカはしょっちゅうするけど、すぐお互いに謝る。
多分、自分が悪かったって、思ってんだ。
『……このやり取り、何回目だろうね』
焦「さあな。でも、ケンカしてるときはついやっちまうから。」
『…そうだね。これからもごめん』
焦「なんだ、それ。」
少し表情が柔らかくなったかな？なんて思ってたら、焦凍は私の頭に手を乗せてきた。
『……？』
焦「…俺、お前に言いたいことがあるんだ」
私に、言いたいこと？
頭の上に乗っていた手は、私の頭を焦凍の方にグイっと向けた。
『…なに？』
焦凍は口を開いて、少し目を逸らしながら――――
焦「………俺、実は―――――――――」
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作者名：派閥弁当 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2018年6月11日 1時
