４話 ページ5
ー焦凍 Sideー
はあ……。
なんであいつは俺につっかかってくるんだろうか。
鬱陶しい。目障りだ。
同じ個性持ちの奴が二人もいたら、Ｎｏ．１ヒーローなんてどっちがなるかわかんねえだろ。
何考えてんだ
どっちかがなれなかったときの、保険か？
ふざけるな…………。
くそ。
今日のAとのケンカだって、俺が完全に負けてただろ……。
あれじゃまるで、俺が保険みたいじゃねえか…。
なんなんだよ…。
そんなことを考えながら、俺は風呂からあがってAを呼びに言った。
ドアをノックする。が、返事がない。
焦「…入るぞ」
中に入ると、敷布団でAが寝ていた。
近づくと、Aが涙を流しているのが分かった。
でもその顔が、とてもお母さんに似ていた。
とても、綺麗だった。
焦「………おい、A。起きろ。風呂に入れ」
起きない。
くそ。早く起きろよ。でも起こさなかったら「なんで呼んでくれなかったの？」っ言いそうだしな。
俺は敷布団の上に乗り、寝ているAの顔の横に両手を置いてまたぐように膝をついた。
焦「A…」
顔を近づけて、流れた涙を拭った。
『ん……』
起きたか。
目を開けたAは、俺がいたことに驚いているようだった。
焦「A。風呂。」
『え……あ、うん。ありがと。』
俺は敷布団からおり、フラフラとAが部屋を出て行くのを見届け、イスに座った。
Aの部屋は、女子らしいものがあまり置かれていない。
この部屋から女子だと分かるものは、服くらいだろう。
それでも、Aの匂いとか、そういうので分かる。
あいつはきっとそんなのより、目指してるもの一筋なんだろう。
ヒーローを目指しているんだ。
俺とあいつが目指しているものは同じでも、考えは全然違う。
そこが合わないせいで、よく口ケンカとかしたんだよな。
最近は個性使い始めたりもするけど。
あいつはお母さんが憎くて、俺は親父が憎い。
でも、Aのことは嫌いになれなかった。
多分俺は、Aが好きなんだと思う。
俺はそれが受け入れきれてないから、きつく当たってしまうんだろう。正直になれない。
兄妹の中でそんなのおかしいんだろうけど、でも俺はなぜか、
なぜか、Aのことを好きになってしまったんだ。
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作者名：派閥弁当 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2018年6月11日 1時
