３話 ページ4
ご飯を食べて、お風呂に行こうとした。
すると向かい側から焦凍が歩いてきた。
『あ……』
焦「…ﾁｯ」
わざと聞こえるようにやってるんだろう。私は聞こえないフリをした。
『…先入っていいよ。私は別に汗かいてないから』
焦「……余計な気は遣うな。面倒だ。」
何、それ。
『あ―――……そう？ごめんね。でも先に行っていいから。』
私は方向転換して、自分の部屋に向かった。
ため息をついて風呂場に入っていく焦凍。『早くしてね』と言おうと思ったけど、これ以上絡む必要はない。
ひいた敷布団に倒れこんで、お母さんの顔を思い浮かべる。
「やめてください！まだ五つですよ……」
「もう五つだ！邪魔するな！！！」
お父さんは、お母さんのことを毎日のようにぶった。
びっくりした。
でも、ヒーローになるにはこのくらいで倒れてちゃだめなんだと思ってたから、
あのときはお父さんが正しいと思っていた。
まあ私は殴られても痛くないし、お父さんはそれが分かってたから私だけは殴らなかったんだけど。
だからあのころは、私のほうが焦凍より強かった。
でも……
「焦凍とAの…あの子達の左側が、時折とても醜く思えてしまうの」
あの時。私はトイレに行きたくて目を覚ました。当時一緒に寝ていた焦凍を起こし、廊下を歩いていた。
ドアの隙間から、お母さんの声が聞こえたから、覗いてみた。
「私…もう育てられない。育てちゃダメなの…」
焦「お…母さん……？」
「―――――…………！！！」
そして、お湯を私たちにかけてしまった。
となりでは目を押さえて苦しむ焦凍がいた。私は最初、焦凍だけが火傷したんだと思っていた。
だから私も右目に包帯を巻かれたとき、はじめて分かった。
私も、焦凍と同じように思われていたんだ、と。
お母さんが入院してから、焦凍は前よりもお父さんを嫌った。
個性も炎を使わなくなったし、ケンカも絶えない。
一方私は、醜いと言っていた左ではなく、右にお湯をかけられた。
お母さんだって、右を狙ったんじゃないんだろうけど。
そんなことはどうでもよくて、私はお湯をかけたお母さんを憎んでいる。
焦凍と真逆の感情。
入院したときいたとき、正直よかったと思った。
また何かされたら、と思うと許せなくなる。
それに、本当は危害を加えるのだって、私だけでよかった。
なのに焦凍にまで……。
そこまで考えてから、私は眠りに落ちた。
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作者名：派閥弁当 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2018年6月11日 1時
