２２話 ページ23
『焦凍のバカ！！』
そう言って走り出してしまった。
家とは真反対の方向に。
やだ。言わないでよ。
なんで今言うの？
私は、私は……
ずっと走り続けて、いつの間にか海に来ていた。
まだ家に帰る気にはなれなかったから、私は砂浜に腰をおろして海を眺めた。
気付いたら海はオレンジに染まっていた。
少し歩こうと立ち上がり、波打ち際に沿ってゆっくり歩いた。
…家、帰りたくないなあ。
「あれ？先客さんかな」
後ろから声がした。
振り返ると、緑色のテンパにそばかすの同い年くらいの男の子がいた。
『え？ええと…』
「あ、ごめんね？僕ここで鍛えてるんだ」
指を指した方は、ゴミがたくさんたまっているところだった。
「えっと……」
『いや、すみません。邪魔して。どうぞ』
横に移動して頭をさげた。
「あああ大丈夫だよ！…なんか浮かない顔してるね？」
え？
今の一瞬だけでそんなの分かったの？
この人……
「僕でよければお話聞くよ」
この人の雰囲気は好きだ。
優しい感じ。姉さんに似てる。
「僕は緑谷出久。緑谷でいいよ。君は？」
『わ、私は轟A。』
緑谷、と名乗ったその人は、私と同じ中三らしい。
私は緑谷に、悩んでいることを話した。
緑「……そっか。そのお兄ちゃんも、Aちゃんと同じ個性だけど片方使いたくないんだね…。」
『うん…。それでケンカしちゃうんだ…。今日だって家に帰る途中に口ゲンカして逃げてきちゃった……』
大変だね…と慰めてくれる緑谷は、本当にいい人だ。
緑「僕も、幼馴染によくバカにされててね……。クラスでも笑われ者で本当大変だよ…」
緑谷も自分のことを話してくれた。
結構仲良くなって、連絡先も交換した。
緑「それじゃあまたね。バイバイ」
『うん。またね』
また新しい友達ができた。
少し話を聞いてもらえただけで大分気が楽になった。
……家、戻ろうかな。
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作者名：派閥弁当 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2018年6月11日 1時
