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佐久間くんと、なんにもない、とは言えなくなった朝、彼は特段変わる様子もなかった。促されるままに浴びたシャワーの温度がぬるくて、もうずっとこのぬるさに打たれていたかった。
『シャワー、ありがとう…』
《いーえ、髪乾かしてあげよっか。》
悪魔だと思ったはずの彼が、昨晩と同じように甘いのは都合のいい幻だと思うことにした。都合がいいのは、私のほうだ。
ブオオ、とドライヤーをしてくれる佐久間くんの指先は優しくて、溶かされそうになる。この人に甘えて、生きていくのはそう難しくはない。難しいのは、あべを好きなまま、友達づらを続けて隣に居座り続けることだ。そんなのきっと夏月だってよくは思わない。
あれ、私ってそもそも、夏月に認識されているのか。
《はい、でーきた。ってまた難しい顔してんの?》
ちゅっ、とリップ音が部屋に響いて、視界が遮られたことに気づく。後ろにいたはずの佐久間くんに頭を掴まれて、奪われた唇。
《はは、もっとしてほしい?》
『…いらない。』
《嘘、蕩けた目してるじゃん。》
唇を貪るように求められて、私の心はあべではない他の誰かで満たされていく。
寂しさや虚しさを埋めるだけの、感情のない、それで。
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まのか(プロフ) - もぉぉぉぉぉぉぉ!!最高ですっ!一気に読ませてもらって 仕事の疲れが吹っ飛びました!w更新楽しみにしてますね^^ (2020年8月11日 20時) (レス) id: 496b8676bf (このIDを非表示/違反報告)
セン(プロフ) - すごい面白くてあっという間に読んでしまいました。続きを楽しみに待ってます。 (2020年8月11日 19時) (レス) id: 0585149188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月叶 | 作成日時:2020年8月5日 0時