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三十二仕事 ページ34

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「久世さん、だいたい終わりました。なんか細かい修正とか気に入らないこととかあったら言って下さい」

そう言われ、久世は自分の部屋を見渡した。

「…ああ、ないよ。ありがとう」

「…え、はい」

久世が素直に感謝を伝えると、双葉は戸惑ったように頷いた。
頷く顔はどこか照れているようにも見えた。


双葉と自分の関係も以前より柔らかくなったものだ、と久世は思った。

雇った当初はすぐ辞めさせようとしていた。

どうやって辞めさせようか、無駄に長時間パソコンと向き合うこともあった。

でも、双葉をあの時、自分の心情的な都合で早々と辞めさせなくて良かったと久世は思う。


双葉がここに来る前、圭一から、うちの甥っ子就活何回も失敗してるけど家事はちゃんとできるよ。

そう言われ、家政夫として紹介された時、久世は大丈夫なのかと疑った。
何回も就職に失敗しているような奴を、自分のテリトリーに入れることに拒否反応を示した。

初めて顔を合わせた時、双葉を見ながら大丈夫なのかと検分した。
見た目は少し頼りなさそうにひょろひょろしていた。
元気だけはあるようだった。

そして咄嗟に泊まり込みだと言ってしまった。
なぜ急にそんなことを言ったのか久世には全くもってわからない。自分のことなのに。

まあ、双葉の働きぶりには舌をまいた。
言ったことはしっかりやるし、久世のために頑張ってくれているのがよく分かる。

解雇の理由など無かったのだ。

最近は双葉がいることが当たり前になった。
朝、顔を合わせ、おはようございますと挨拶されること。
仕事に行く時、いってらしゃいと言われること。
帰るとおかえりなさいと迎えられること。
朝食夕食、たまに昼食を共に過ごすこと。
夜、おやすみなさいと別れること。


今双葉が居なくなってしまえば、以前と同じようにひとりで広い屋敷の中を過ごすだけだ。

今はそれがとても恐ろしく思える久世だった。


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設定タグ:BL , 男主 , 家政夫   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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(プロフ) - 白銀の狼さん» 猫たちの名前は白銀の狼様の案を採用させて頂きました!ありがとうございました! (2019年12月15日 23時) (レス) id: 16a8646f1c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アリアさん» 名前ありがとうございます!わざわざ作者の戯言にも気遣いいただいて…続編は作ります (2019年12月8日 13時) (レス) id: 16a8646f1c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 白銀の狼さん» センスある名前ありがとうございます! (2019年12月8日 13時) (レス) id: 16a8646f1c (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 猫の名前ですが、きゃらめる、とかちょこ、とかばにら、とかひらがなでスイーツ系でつけてそうです...!私は続編に行こうが見ますし、作者様が作りたくないと言うなら素直に受け止めますのでじっくり考えて続編出すか出さないか決めてください♪ (2019年11月11日 18時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
白銀の狼(プロフ) - 猫さんの名前お母さんはリズ、お兄さんはリオ、弟さんはリトなんてどうでしょう? (2019年11月11日 0時) (レス) id: d028fadf80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひぃ | 作成日時:2019年5月6日 21時

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