オンライン！──四年後の世界で──

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「三人は、この授業の次って空いてる？」

そう言う翼の表情は、元攻略組からしたら少し恐ろしいくらいの、にこやかな笑顔だ。

「えっ……あ、はい」

「あ、そう？ じゃあさ、食堂で何か一緒に飲もうよ。俺も空いてるからさ。その代わり、この席諦めてくれない？ この後来る友達の分だからさ」

「いや、でも」

そこで翼は頬杖をつき、三人に向かって、驚くほど人懐っこい笑みを浮かべて言った。

「……だめ？」

「いっ……いや、ぜひっ！！」

すると、女子三人組は満足そうに去っていった。

……。

「……つ、翼君、凄いね……ありがとう」

「僕ハニートラップってやつ初めて見たよ……」

「……いや、まあ、もう慣れたし」

そう言って翼は苦笑いし、疲れたようにため息をついた。

「そういえば、お二人はこの後授業はあるんですか？ そろそろ始まりそうですが……」

「私は空きコマだから平気ですけど、朝霧さんはどうですか？」

「僕は隣の教室だから、そろそろ行くね！ またね、舞さん、翼君、増田さん！」

朝霧が教室を出る。舞も、荷物をまとめて立ち上がった。

「じゃあ、私も行きます。授業頑張ってください！」

「ん。八城さんも、俺に負けないように頑張ってよね」

「！ でも、この前のテストは私がトップだったから！」

「フンッ。それもあって、今回は燃えてるからね」

舞と翼は、大学内の成績トップ1、2をいつも争っている。

「はは、俺には到底ついていけないなあ」

「いえいえ！ 増田さんもめちゃくちゃ勉強できるじゃないですか」

「八城さん、それより早く行かないと、ほんとに授業始まるよ」

翼の一言に、舞はハッとして、二人に手を振って教室を出ていった。



何もない、平穏な日常。

四年経った今でも、噛みしめるようにそれを実感する。

世界から「ナイトメア」という異物が消滅して、人々の記憶から段々とその存在は消えていった。GTの取り組みが続く今でさえもう、世間からその存在はまるで無かったかのように、何もない、奇跡のような毎日が流れている。

しかし、彼らの中にはしっかりと刻み込まれている。

あの、恐怖で満ち、仲間とともに必死に光を求め戦った日々が。

絶望の中でも希望を見出し、数々の悲しみを乗り越え、苦痛を越えて、やっと掴んだ勝利の歓びが。

今でも、消えることなく、色褪せることなく、鮮明に思い描く。

あの勝利は、彼らの「証明」だ。

どんなに小さくても、不完全で足りなくても、仲間とともに戦えば、どんな悪夢も打ち消すことができる、と。



廊下の窓から差し込む陽光は、彼らの光そのものだった。

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