ありがとう、大和祐大#1 ページ33
ちょっとだけ。ほんのちょっとだけ期待していた。
貴女が僕の考えを察してくれる事を。
貴女が僕の事を考えてくれるのを。
だから嬉しくなってしまったんです。
貴女が此処に居ることを。
｢祐大くん｣
｢あぁ、##NAME1##お姉さん。手塚くんは良いんですか？｣
｢国光くんならもう行かせたよ。手続き済ませて直ぐに出発するでしょうね｣
｢そうでしたか。てっきり引き止めるのかと思っていました｣
悠々と、大和祐大は##NAME1##に話し掛ける。
いつも通りに、何も変わらず。
だか、対する##NAME1##の顔に笑顔はなかった。
彼女はただ淡々と言葉を紡ぐ。
｢彼の成長を間近で見れないのは残念だけれど……。
そんな個人的な理由で進化を留まらせるなんて、指導者として失格でしょ？｣
｢ふふっ。##NAME1##お姉さんのそうやって割り切れる所、大好きですよ｣
｢ありがとう。私も祐大くんのこと、好きだよ｣
そうは言うものの、彼女の表情は無のまま。
怒っている訳では無い。だがいつもの彼女でも無い。
せっかく｢好きだよ｣なんて言葉を貰っても、素直に喜ぶことは出来なかった。
自分がそうさせてしまっているのは分かっているのだが、大和は困ったように眉尻を下げる。
「それで……そんな大好きな##NAME1##お姉さんに黙って、どこ行くつもりだったの？」
「困りましたね。貴女には全てお見通しの様です。
わざわざ来てくれたんですか？」
「そうね。まぁ、事と次第によっては色々と対応が変わってくるけど」
大和の手には大きな荷物。
##NAME1##の視線はずっとそこに注がれていた。
何処に行くつもりだなんて、そんな事問わずとも分かっているはず。
彼にとって、それは喜ばしい事だった。
寧ろそれどころか、彼女が此処で自分を見つけてくれた、その事実だけで彼の心は満たされる。
「すみません。##NAME1##お姉さんの顔を見たら僕、判断が鈍っちゃいそうで」
「私ごときで鈍る程度の覚悟なの？」
「……分かってないですねぇ」
”ごとき”なんかじゃない。眼の前の彼女はその重要さを分かってない。
手塚国光の存在と##NAME1##の存在が自分を支え、テニス人生に色を与えてくれた。
彼の成長が励みだった。彼女の期待が歓びだった。
貴方たちに、どれだけ救われてきたか。分かってない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 180人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Haiter(プロフ) - めいさんさん» 返信、更新、共に遅くなってしまい大変申し訳ありません……。停止している間もコメントを頂ける事、大変嬉しいです！励みになります！コメントありがとうございました！！ (11月19日 21時) (
レス) id: fd3983f77f (このIDを非表示/違反報告)
めいさん(プロフ) - 面白すぎて一気読みしちゃいました!!執筆して下さりありがとうございます!! (9月2日 3時) (レス) @page20 id: abdb809fc9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっち - 面白かったです。更新頑張って下さい (2023年2月20日 23時) (レス) @page20 id: f8c9fe1d36 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Haiter | 作成日時：2021年7月25日 21時
