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不審者だと言われても弁明出来ないような状況下。
私は手元の紙の事などすっかり忘れて彼の一つ一つの仕草に魅入ってしまう。
ぼんわりと自虐しながらも自身の欲に従っていれば、ふいに赤月の瞳と目が合った。



「(…ん?目が合った…?)」

「あ?そんな所で何してんだ。」

「ひっ…!」



喉の奥から短い悲鳴が鳴る。
それが聞こえたのかどうかは分からないが、怪訝な表情を浮かべた赤い瞳の持ち主。
廊下の角で座り込んでいる不審者へ、一歩二歩と近付いた。
不審者もとい、私の心臓が今度は緊張と恐怖でバクバクと暴れ出す。
やばい。絶対変な奴だと思われた。
なるべく視界に石神くんが入らないように、視線を床に落とす。
パニックになって言葉が一切出てこない。



「何してんだって聞いてんだ。」

「あ、あの、えっとあの…」

「おい、具合でもワリぃのか?だったらさっさと――

あ?」

「…え?」



石神くんが中途半端に言葉を切ったので、思わず顔を上げて彼を見た。
すでに彼の視線は私から外れていて、眼を僅かに見開き外の何を注視している。
何事かとつられてそちらに目を向ければ、先程まで青々としていた空の色が変わっていた。
やけに明るい緑色の光。それが青空を上書きしてあっという間に広がっていく。
何が起きたのか全く分からずに、見慣れない緑をただ眺めた。
だが眺めたと言っても、それはほんの数秒間。

次の瞬間には、私の視界は暗闇へと変わっていた。
突然動かなくなった身体。何も聞こえず、何も見えない。声を出す事さえ叶わない。
何の前触れもなく思考以外を奪われ、感情が追い付かない。



「(石神くん!!石神くん!!)」



どうにか声を振り絞ろうとしても、唇は接着剤で固められたかのように開かなかった。
意識だけがハッキリしているのを違和感に感じながら、ひたすらに彼の名を呼び続ける。
そして徐々に宿っていったのは、我が人生で一番と言えるであろう後悔の念。
せめて、あの紙くらいは渡しておけばよかった。泣きそうになるが涙は出ない。

そういえば、気のせいだったか。光に包まれる直前、石神くんに「##NAME2##」と呼ばれた気がした。



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ぴよ丸(プロフ) - 何これめっちゃ面白い!!無理はなさらないでください!!ずっと待ってます(●︎´▽︎`●︎) (2021年11月19日 2時) (レス) @page7 id: aeb6108fee (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - おもしろいです!これからも楽しみにしてます、、!頑張ってください!!!( ;__;) (2020年6月24日 22時) (レス) id: 7701c78eca (このIDを非表示/違反報告)
豚ゴリラ - ガッカリ (2020年6月8日 2時) (レス) id: 62aac85ba9 (このIDを非表示/違反報告)
- すいません、何か終わりになってるんですが (2020年6月2日 5時) (レス) id: 250604a6b5 (このIDを非表示/違反報告)
F@えふさん(プロフ) - すごく大好きです!応援してるので、頑張ってください! (2019年11月16日 0時) (レス) id: cecfbdba3c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Haiter | 作成日時:2019年8月8日 23時

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