ゆったりホリデー【プロローグ】 ページ2
練習終わり、日の暮れたコートから帰路を行く一軍選手。
夕食を楽しみにした紅一点、##NAME1##が先頭を切って歩く。
寒くなったなぁ、と寒山の空気を肌で直に感じる。晩秋の夜は彼らの体温を徐々に奪って行った。
皆の間を絶えず強風が吹き荒れ、木の葉と髪の毛が舞い上がる。
「今の風、めっちゃ強かったですね」
「木枯らしでしょう。冬も、もうすぐそこですね」
「うぅ〜さっむい！」
「風で吹っ飛ばされんなよ、ちび猫」
「その前に篤京くんの事ぶっ飛ばしてあげようか？」
毛利と君島が談笑する後ろで、遠野が笑いながら前方の##NAME1##にからかいの言葉を投げる。
彼女も振り返りながら言い返したが、何故か遠野の姿がパッと見では見当たらなかった。
おや？と思ったが、よく見たら越知の背後に居たらしい。
自分だって月光くんより背低いくせに、なんて心の中で悪態をつく##NAME1##。
「この気温じゃ、練習で温まった身体もすぐに冷えちまうし」
「この程度の寒さで大げさなんだよ」
「そないな事言うて、アツだってさっきからツッキーの影におるやん」
「背が高いからと彼を風除けにするのは、どうかと思いますが」
「篤京くん出身青森でしょ？地元の方が寒いんじゃないの？」
「フン、うるさい奴らだな」
秋空を眺める大曲と、寒そうに身を縮こませる##NAME1##。
それに対して憎まれ口を叩く遠野だったが、種ヶ島の一言によって越知を盾にしていた事が明かされてしまった。
成程、だから先程から彼の後ろをピッタリとくっ付いて歩いていたのか。
君島は溜息を付き、##NAME1##は遠野の隣まで行き疑問を問うが「うるさい」の一言で済まされてしまう。
「月光くん大丈夫？」
「問題ない。さして影響は……っ……」
再び、彼らの周りに強風が吹き荒れた。
冷たい風が手や頬に刺さり、レストランへ向かう彼らの足取りが少し早くなる。
遠野の風除けにされていた越知はダメージが大きかったのか、途中で口を噤んだ。
表情には現さないが、とても寒そうである。
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作者名：Haiter | 作成日時：2022年7月31日 0時
