☆ ページ34
肩に掛かる真っ直ぐな長髪に、あの横顔。
……間違いない、仙兄だ。
『でも、何を……?』
このお店は、女物の小物や小袖、反物を取り扱っているお店だ。
仙兄が使うような男物は置いていないはず。
……まあ、聞けば分かるか!
何かを待っているのか、その場で立ったままの仙兄。
声を掛けようと、私は背後から近づいた。
『おーい!仙兄〜……』
が、私は目に入った光景に思わず立ち止まる。
私が声を掛けたのと同じタイミングで、仙兄の向こうの仕切りから出てきたのは……女の、人?
仙兄は、可愛らしい小袖を着たその女の人に振り返った。
「よく似合うではないか」
仙兄と仲良さげに笑いあう女の人。
しかも、遠目でも分かるくらいとんでもない器量良しだ。
驚きのあまり、二人を思いっきり見てしまう。
男女でお店に来て、彼女を褒める男……逢引きの他に何があるのだろう。
『えっ、仙兄に、こ、恋人……?』
確かに、もういてもおかしくは無い歳だ。
でも、いつから、どこで……?
そんな調子で暫く立ち尽くしていると、反物を彼女に合わせていた仙兄がふとこちらに気づいた。
同時に、隣の女の人も私の方を向く。
「A!お前も買い物か?」
『あ、え?う、うん!』
すぐに駆け寄って来る仙兄、その後ろから小袖を試着していた彼女も歩いて来た。
……何というか、尋ねたい事が多すぎる。
「ところで、何を探してるんだ?」
『あっ、その、小袖を買いに……』
なんだろう、この状況。
よろよろと何歩か後退りすると、後ろの彼女さんと目が合った。
彼女さんは、私に柔らかく微笑む。
わあ、近くで見るとやっぱり美人さんだ……
『せ、仙兄は恋人さんと逢引き中だよね?すっごく綺麗で素敵な方!』
「は?」
『大丈夫、誰にも言わないから!内緒にしておく!じゃ、私は邪魔にならないように……』
小袖なんていくらでも違うお店を探せば良い。
踵を返し、二人に背を向ける。
そのまま早歩きで立ち去ろうとすると、仙兄が待てと私の名前を呼んだ。
「えっと……何を勘違いしているんだ?」
『か、勘違い?』
……私、勘違いなんてしただろうか。
心当たりも無く首を傾げると、仙兄は突然笑い始めた。
『えっ、ちょ、仙兄!?』
「ははっ、すまん、A。この女性は……」
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海鈴(プロフ) - まみむーさん» わぁあとっても嬉しいです!!頑張ります! (2021年6月23日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 面白い作品の予感……!更新楽しみにしてます^ ^頑張ってください! (2021年6月23日 21時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2021年6月22日 22時