どれが似合う?の段 ページ33
『あ、ここだ!』
店先に並ぶ煌びやかで色とりどりの反物の前で、私は足を止める。
布に小袖、それに傘……
シナ先生から頂いた地図を見る限り、この大きな店で間違い無さそうだ。
『ごめんくださーい……』
ここは、忍術学園から少し離れた商業の町。
なぜ事務員である私がこんなところにいるのか、それは遡ること数刻前……
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忍術学園に来て数日が過ぎ、仕事にもだいぶ慣れてきた私。
遂に外出許可が降り、早速学園長先生のおつかいの仕事を受け持とうと思ったものの……
「あらまAちゃん、小袖を持っていないの!?」
『はい、この三年はずっと男用の旅装束だったもので……』
あっと驚くシナ先生に、私は苦笑しながら頷いた。
忍術学園では、忍務以外で忍装束で外に出ることは許されない。
一目で学園関係者だと分かってしまうからだ。
そこで、外出着なるものが必要なのだけれど……
そもそも私には外出に行く時に着るものが無かった。
「男用の旅装束って、本当にそれしかないの?」
『はい。女物だと目立ってしまいまして……』
「まあ、そうよね……うーん」
昔、ここにいた頃に着ていたものは勿論もう入らない。
かと言って、事務員になった今再び旅装束を身につけるのも……
「あっ、そうだわ」
暫く考えた後、何か思いついた様にシナ先生がこちらを向いた。
「やっぱり、お店に行って買っちゃいましょ!私のお古も何枚かあげられるけど……おすすめのお店を紹介するから、行ってらっしゃい」
『はい!あ、でもお金は……』
「そんなの、学園長先生が払って下さるに決まってるじゃない!」
気丈に笑うシナ先生。
そうして、私は町に出ることになったのだけれど……
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……まさか本当に払って貰えるなんて。
私は改めて、懐に入っている銭を確認する。
なんでも好きな物を買ってこいと渡されたそれは、ずっしりと重い。
店に入ると、着物姿の綺麗な女性がこちらを向いて、お辞儀をした。
「いらっしゃいませ」
『あの……小袖を探しているのですが』
こういう店での買い物はあまり慣れないのか、どうしても硬くなってしまう。
「小袖でしたら、上の階でございます。既製品の他に、ご要望に沿って繕うこともできますが」
『えっと、とりあえず、見てみます』
「承知致しました、こちらへ」
女性に続いて二階へ上がる。
……すると、見覚えのある後ろ姿が目に入る。
『あれは…』
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海鈴(プロフ) - まみむーさん» わぁあとっても嬉しいです!!頑張ります! (2021年6月23日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 面白い作品の予感……!更新楽しみにしてます^ ^頑張ってください! (2021年6月23日 21時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2021年6月22日 22時