☆ ページ25
喜八郎 side
Aさんを連れて、会計委員会室の前に到着する。
活動をしていると思えない程に静粛だが、部屋の中からは微かに算盤を弾く音が聞こえた。
「とうちゃーく」
『会計委員会ってここでやってたんだ』
知らなかった、と首を傾げるAさん。
僕は台車を持ったまま頷いた。
「そりゃあ、会計委員会室ですから」
『そっかあ……あれ、この火器は？』
「あぁ、それは三木ヱ門の……」
適度に返事をしながら、横目でちらりとAさんを見る。
好奇心旺盛な彼女、今度は入り口にある三木ヱ門の火器に気を取られている様だ。
『三木ヱ門は火器好きになったんだね〜！』
「ええ、まあ」
……今がチャンス。
そっと、台車に手を伸ばす。
Aさんの視線がずれているうちに、僕はさりげなく資料の束を持ち上げた。
台車の時もそうだったけれど、こうでもしないと彼女はきっと気を遣ってくる。
……あくまでも、あの人にとって僕は歳下。
まだあの時のまま、「かわいい」存在なのだろう。
『委員会活動中失礼します、事務の大川Aです』
「四年い組、綾部喜八郎でーす」
会計委員会室の襖を開けると、いつも通り会計委員会の面々が黙々と帳簿に向き合っていた。
その中の一人、顔を上げたのは……潮江文次郎会計委員会委員長だ。
「おぉ……どうした、お前ら」
潮江先輩の問いかけに、Aさんは要件を伝える。
『今期の予算会議の書類を持って来たの。待ってね、運んで……』
……今だ。
「こちらでーす」
Aさんが廊下に目線を移したその瞬間、僕は尽かさず持っていた束を先輩に差し出した。
Aさんは驚いて僕に振り返る。
『えっ、喜八郎！？いつ……』
「さっきです」
「ありがたい、確かに受け取った。どれどれ……」
一方、潮江先輩は束を受け取ると早速内容を確認し始めた。
その間、他の会計委員はどうやら休憩に入るらしい。
「Aさん、こんにちは！」
「こんにちはー！」
『わっ、こんにちは！えっと、皆は確か……』
……いいな、下級生は。
あんなに素直に話しかけられたら、思った通りに話せれば、どれ程いいんだろう。
囲まれるAさんを横目に、僕は考える。
彼女にとって僕は"弟"。
でも僕にとってのAさんは、姉上なんかじゃない。
重たいものくらい、持たせてくれたっていいのに。
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海鈴(プロフ) - まみむーさん» わぁあとっても嬉しいです！！頑張ります！ (2021年6月23日 22時) (
レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 面白い作品の予感……！更新楽しみにしてます^ ^頑張ってください！ (2021年6月23日 21時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海鈴 | 作成日時：2021年6月22日 22時
