検索窓
今日:11 hit、昨日:1 hit、合計:54,104 hit

ページ23

「綾部喜八郎?」

『喜八郎、いいの!?』


私と吉野先生が驚いて向き直ると、喜八郎は心外といった表情で頬を膨らませた。


「なんでそんなにびっくりするんですか」

『ご、ごめん……でも』


記憶の中の喜八郎は、常に穴を掘っていた。
いつだって考えるのは穴の事、それ以外は上の空。

こういう時、真っ先に名乗り出るタイプでは無い。



「しかし綾部喜八郎、委員会の仕事は?」


そうだ、喜八郎も活動があるんじゃ……

吉野先生の問いに、私は大きく頷く。


喜八郎はいいえ、と首を横に振った。

「作法委員会は既に今期の予算会議の準備は終えてますし、立花作法委員会委員長もAさんの為なら文句なしかと」



私と吉野先生は顔を見合わせる。

自らがやると言っている上に、委員会活動も問題無し。
そうくればもう遠慮する理由は無かった。


「そうですか?では……」


『ありがとう〜!!喜八郎』

「……いえ、別に」



……あれ、ちょっと馴れ馴れしかったかな?

私は思わず立ち止まる。
笑顔でお礼を伝えたが、目を逸らされてしまった。

もしかして、やっぱり手伝いは嫌なのだろうか。
そうかもしれない、あの資料の山を見れば……



「Aさん、行きますよ」

『えっ』


振り返ると、台車に手を掛けた喜八郎がこちらを伺っている。
私が暫し逡巡している間に、準備を整えていたらしい。

そのままスタスタと進む喜八郎の背中を、急いで追いかけた。


『あっ、ちょ、待って!台車、私が持つ』

「いえ、僕が持ちます」

『でも、重くない?』

「重いから僕が持つんです……これくらい大したことないですから」


そう言われると、何も言い返せなかった。

確かに、今では私より喜八郎の方が力持ちかもしれない。


手持ち無沙汰のまま、進んでいく喜八郎の後を歩く。
無言の空間のとんでもない気まずさに、私は口を開いた。


『ごめんね、付き合わせて』

「なんで謝るんですか?」

『その、嫌かな、って』

「おやまあ、誰がそんなこと」


これまた予想外といった様子で喜八郎は目を丸くする。
そして、口籠りながら俯いた。



「小松田さんは僕の掘った穴に落ちましたし、その、それに……昨日だって、ぜんぜん話が出来なかったから」


予想外の答えに、え、と腑抜けた声が出る。


昨日というのは、もしや歓迎会のこと……?

確かに昨日は、四年生とあまり話せなかったような。
 

それって、つまり……


私は、胸がいっぱいになった。

☆→←☆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (92 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
189人がお気に入り
設定タグ:忍たま乱太郎 , 忍たま , RKRN   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

海鈴(プロフ) - まみむーさん» わぁあとっても嬉しいです!!頑張ります! (2021年6月23日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
まみむー(プロフ) - 面白い作品の予感……!更新楽しみにしてます^ ^頑張ってください! (2021年6月23日 21時) (レス) id: 53993a59b7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:海鈴 | 作成日時:2021年6月22日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。