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……なんだろう、この感じ。
小学校の頃のクラスの男子と言い合いしてるみたいな、喧嘩とは言えない喧嘩というか。
とにかく、私も負けじと言い返す。
『誰が死んだふりなんて!あれは倒れてただけです!』
「倒れてても同じ事です。あなたを見つけたのが一年は組の良い子たちじゃなきゃ、今頃あなたはこの世にいないでしょうね」
『うっ』
図星を突かれ、口を噤む。
彼は一息つくと、今まで全く変えなかった表情から一転、少し眉を寄せた。
「確かに学園はあなたを保護していますが、天女への恨みは制限していない。天女に関して、あなたがどこまで聞いているかは知りませんけど……あなたはいつ殺されてもおかしくない」
『……』
厳しい言葉、でも全て正論だ。
少しでも目を逸らせば覇気に負けてしまうような気がして、私はまっすぐ彼を見つめる。
「それなのに、なぜ余計なことをするんですか?」
……余計な事、ね。
一瞬、この人こんなに喋る人なんだななんて考えるけれど、それはまた後で、だ。
私は手にもつ矢を彼に渡し、微笑んでみせた。
『閉じこもってても生きれる保証は無いし、何も始まらない。どうせ殺されるなら出来ることをやって、後悔の無いように。まあ、死ぬ気無いですけど……頑張って、必ず家に帰ります』
「家に」
『はい』
暫く、無言の時間が続く。
その後、彼はそうですか、と再び息をついた。
「なら、好きなようにすればいいんじゃないですか」
『……はい』
意外とあっさりと引き下がった彼に、小さく頷く。
その時、私の中にもう一つの疑問が浮かんだ。
『……なんでそんなこと聞くんですか?』
「別に。気になったから聞いたまでです」
……さっきの饒舌さは何処へやら。
再び無表情になった彼は、どうやらかなりマイペースなようだ。
でも、あそこまで忠告してくれるということは……やっぱり悪い人ではないと思う。
「さて、僕はもう行きます……暗殺は、また挑戦するとしましょう」
『えっ、ちょっ』
飛ぶ態勢になった彼を引き留めようとするが、手は宙を掴む。
やはり忍者のたまごだけあって、あっという間に夜の闇に紛れてしまって見えなくなった。
『……いっちゃった。ん?』
カラン、という音に足元を見れば、筒状の何かが落ちている。
拾い上げて見てみると、竹で出来ていて、中は空洞だった。
『何これ、忘れ物……?』
開け閉めできる形状だけど……
私は、首を傾げた。
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海鈴(プロフ) - 麗羅さん» わぁあありがとうございます!性格についてはかなり考えたので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2022年1月28日 18時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - コメント失礼します!すごく面白いです!夢主ちゃんが剣道が得意で明るい性格っていうのがすごく好きです!更新楽しみにしています! (2022年1月27日 22時) (レス) @page2 id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
海鈴(プロフ) - みこちさん» ありがとうございます! (2022年1月14日 22時) (レス) id: 7471f44b15 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» もしも、この作品にゲストが出るとしたら、雑渡さんか兵庫水軍の皆さんが現れてくださったら…なんて考えてしまいます。応援します! (2022年1月13日 12時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 海鈴さん» 後も一つ、犬夜叉と鬼狩りという奴も在りますよ。出来ますれば、コメントを頂けたら嬉しいです。どんなコメントでも大歓迎です。 (2022年1月11日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海鈴 | 作成日時:2022年1月9日 22時